学習と健康・成長

東日本大震災から10年、防災教育はどう変わったか 当時知らぬ子どもたちへ伝えるために

2021.06.22

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夏野 かおる
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「恐ろしさ」ではなく、「適切な行動の大切さ」を伝える

——子どもへの防災教育で特に難しいのはどんなことでしょうか。

基本的な知識を、丁寧に伝える必要がある点です。

子どもの近くに、いつでも保護者や先生がいるとは限りません。そのため、子ども自身が主体的に考え、身を守れるように教えることは重要です。そもそも基礎知識がなければ、主体的に考えるための材料がなく、行動することもできません。

あれもこれも、と教えるのではなく、基本的なことを「なぜ、そうしなければならないのか」、科学的な根拠も含めて教えていくことが重要であり、また難しい点でもあります。

——実際に災害に遭ったことのない子どもには、災害の恐ろしさや備えの大切さがなかなか伝わらないのでは、という懸念があります。

災害の恐ろしさを伝えることの大切さは理解しますが、「恐ろしさ」だけにフォーカスすると「怖い=考えたくない」となってしまい、逆効果になります。

実際にある学校で防災教育を行った際、過去に非常に厳しい外部指導者が、スムーズに行動できなかった生徒を前に呼び出し、それではいざという時に身を守れないと泣くまで叱責したことを教えていただきました。真剣に命を守ってほしいと考えての指導だとは思いますが、生徒からは「とても怖かった」「もうやりたくない」という意見があったそうです。

「大事なことだからしっかり伝えたい」。その想いは理解しますが、「備えの大切さ」や「適切な行動」を伝えるためには、視点を子どもたちに合わせる工夫が必要です。

例えば小学校低学年~中学年の児童であれば、「まずは自分の宝ものを想像してみて。災害は大切な宝ものを奪ってしまうかもしれないよ。それを守るためにはどうすればいいかな?」と促す。それによって、災害を自らのこととして捉えやすくしてから、適切な行動を教えていくといった方法です。

——東日本大震災以降、YouTubeなどで子ども向けの防災コンテンツを目にするようになりました。防災教育が前進したように思えますが、防災教育普及協会としてはどう感じていますか?

残念ながら、震災以降も依然として担い手不足の解消には至っていません。しかし、おっしゃるとおりで、情報発信をする方の多様性は広がりました。

たとえば、民間企業やNPO法人、YouTuberなど「インフルエンサー」と呼ばれる人たち。これまであまり防災と関わりのなかった分野からの発信が活発化し、防災に関する情報を目にする機会が増えたのではないかと思います。これらの情報は子どもでも分かりやすく、楽しく学べるよう工夫が凝らされており、伝え方・伝わり方の変化を感じます。

伝え方の多様化自体は歓迎すべきことですが、いずれも検索など能動的なアクションによって得られる情報のため、学べる環境には個人差があります。基本的な部分は義務教育などでしっかりと伝えていく。そうしたバランスを意識しつつ、活用していくのがよいのかもしれません。

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