大学中退を防ぐために

大学中退予防のカギは高校にあり オープンキャンパスで目を養おう

2021.06.23

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豊 吹雪
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今や2人に1人以上が大学進学をする時代です。しかしその結果として、中途退学者も増えています。多くの大学は中退を未然に防ぐために様々な施策を講じていますが、やはり学生本人が自分に合った大学を選ぶことが何より大切です。オープンキャンパスが本格化する夏を前に、大学の職員として中退予防に取り組む九州産業大の一ノ瀬大一さんと、進路指導のプロの倉部史記さんに、どのような観点で大学選びをしたらいいのか、聞きました。(写真は、ウィークデー・キャンパス・ビジットでの体験を振り返る高校生たち=2019年10月、福岡市の九州産業大、同大提供)

一ノ瀬大一

話を聞いた人

一ノ瀬大一さん

九州産業大学学生係長

(いちのせ・だい)2003年、学校法人中村産業学園九州産業大学に入職。10年間学長秘書を務めた後、教務係長、学生係長として大学改革の中心的な役割を担う。14年には全学共通カリキュラムである「KSU基盤教育」を開始し、中退予防に関する13件のプロジェクトを推進。また、18年度入試では九州で初めて「育成型入試」を導入。同大学の中退率は6年連続で減少している。

倉部史記

話を聞いた人

倉部史記さん

NPO法人NEWVERY理事

(くらべ・しき)私立大学専任職員や予備校の総合研究所主任研究員などを経て、現在、フリーランスで進路づくり講師、高大共創コーディネーターとして活躍。「主体的な学習者を育てる高大接続の環境整備が重要」との観点から、全国の高校や大学、NPOなどと連携してプログラム開発や情報発信を行っている。著書に、「ミスマッチをなくす進路指導」「進路指導白書2017」など。

リアルな授業や学食を体験

教育改革・中退予防に2013年から取り組んできた九州産業大学学生係長の一ノ瀬さんは、偏差値や入りやすさだけで決めてしまう安易な大学選びに警鐘を鳴らしています。

同大には中退を未然に防ぐための13のプロジェクトがあります。プロジェクトの中身は「1年次生全員への二者面談。出席不良者へは継続指導」「低学力層に対する国語プログラム実施」「全学生対象に社会人になるための基礎力を培う教育の導入」「2~4年次の成績不良者への重点的・継続的な学修指導・支援」など、徹底して個に寄り添う内容です。その結果、5.65%(15年度)だった中退率が3.99%(20年度)まで減少しました。

また、このプロジェクトは中退の可能性が高まった学生に寄り添うだけでなく、志望前の高校生にアプローチしている点に大きな特徴があります。進路選びや学部・学科のミスマッチを防ぐことを目的に14年度から始めた「ウィークデー・キャンパス・ビジット(WCV)」がそれで、大学生に混ざって普段の授業に出席し、学食でお昼を食べ、入学後の大学生活を具体的に体験できるプログラムになっています。高校生2000人が参加するまでに定着し、WCVを体験して受験を決めた高校生も増えたそうです。

一ノ瀬さんは言います。「自身の興味や関心と本当に合った大学・学部・学科なのか、理解して入学することが一番大切です。明らかにミスマッチで中途退学に至る学生が一定数いるのですから」

ミスマッチが退学の温床になっていることを示すデータがあります。

一ノ瀬さんが19年、同大を中退した848人を対象に行ったウェブアンケート(回答者数84人)の中で、「どんな指導や支援があれば中退しなかったか」との問いに対して、最も多かった回答は「高校時代に大学や将来について考えるプログラム」で30.6%でした。次いで「学生生活などについて気軽に相談できる制度」(22.6%)、「友人ができるようなイベント」(18.5%)、「奨学金などの経済的支援」(15.3%)、「レポート指導などの学修支援」(12.9%)となっています。

ここから分かるのは、志望校を決める際、自分の将来を具体的にイメージせずに「安易に」大学選びをしている学生がそれなりのボリュームでいる、という事実です。

複雑で予測不可能な現代では、偏差値や親の世代が持つイメージだけで進路先を決めるのではなく、本人の興味や関心に合っているか、個性に適した専門分野なのか、学生一人ひとりに寄り添った支援があるのか、よくよく見極めたいところです。

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