わが子を算数・数学嫌いにさせない習慣

乗車中の列車の速度は腕時計で測れる 「は・じ・き」の丸暗記に要注意

2021.07.09

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。パターン化した入試対策の影響か、受験生はそんな「暗記数学」のわなに陥りがちです。人工知能(AI)が急速に普及するなか、今後求められる算数・数学の力とはどんなものでしょうか。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の面白さを教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、「AI時代に必要な数学力」を説きます。(タイトル画:吉野紗月)

速さ・時間・距離の関係を図式化

動いているものの「速さ」とは、単位時間あたりどのくらいの距離を進むかを表すものです。たとえば、「時速50km」とは1時間に50km進むこと。時速50kmで走行する車は、4時間に200km進むことになります。

お年寄りの方々を除き、小学生からその親の世代まで、多くの人が「は・じ・き」を知っていると思います。速さ(は)・時間(じ)・距離(き)の関係のことで、図のように表します。

はじき

「は」(速さ)×「じ」(時間)=「き」(距離)

の公式を図示しており、「き」を「は」で割ると「じ」、「き」を「じ」で割ると「は」、などの関係も表しています。

最近は「速さは、単位時間あたりどのくらいの距離を進むかを表すもの」という意味を理解させず、いきなり「は・じ・き」による「やり方」暗記の教え方が広がっています。子どもは時間の経過とともに使い方を間違いがちで、暗記した図式を忘れてしまった大学生の一部には、信じられない間違いをする者が目立つようになっています。

実は「は・じ・き」ばかりでなく、最近の算数や数学の学習では「理解」をおろそかにして「暗記」に頼る傾向が顕著で、これが数学の学びにとって大きなマイナスになっています。そのことは昨年末に上梓した『AI時代に生きる数学力の鍛え方』(東洋経済新報社)に詳しく書きました。一方で、数学の学び全般に関していえることですが、面白い応用例を教えないことが数学嫌いを増やしている面もあります。そこで「速さ」の問題に関する応用例を二つ紹介しましょう。

①乗車している在来線の列車速度は、腕時計一つで測ることができます。日本の在来線の線路は一部の例外箇所を除いて、基本は1本が25mです。そこで、線路の継ぎ目を車輪がまたぐときの「ガタン・ゴトン」という音を1秒間に1回聞いたとすると、1分間に60回聞いたことになり、その間に列車は、

25m×60=1500m

進むことになります。すなわち分速1.5kmで、時速に直すと90kmになります。

②遠くの花火が光ってから「ドン」という音を聞くまでの秒数から、自分の位置から花火までの距離が分かります。東京の隅田川花火大会や国営昭和記念公園花火大会を見物したとき、少し距離をおいて見た方が素晴らしいと感じることがありました。花火が光ってから「ドン」という音を聞くまで6秒かかったならば、自分の位置から花火までの距離は何kmでしょうか。

音の速さは秒速約340m、光の速さは秒速約30万kmなので、光の速さは無視できます。すると、

自分の位置から花火までの距離=340×6=2040(m)

となります。つまり、約2kmということが分かります。

では、次の問題に挑戦してみましょう。

【問題】遠くから4両編成のローカル列車を見ています。先頭がトンネルに入りかけたときから最後尾がトンネルに入るまで、ちょうど6秒かかりました。在来線の一車両の長さが20 mであることを用いて、この列車の速さを求めましょう。

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