学習と健康・成長

子どもがスポーツ嫌いになる理由は? 苦手意識を持ちにくくするには? 専門家に聞く

2021.06.28

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夏野 かおる
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スポーツ庁の「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」によると、小学5年生の9.6%、中学2年生の16.3%が「スポーツが嫌い・やや嫌い」と感じていることが明らかになりました。なぜ子どもたちは成長するにつれ、「スポーツが嫌い」と感じるようになるのでしょうか。新学習指導要領による体育の授業変化と併せて、日本中学校体育連盟事務局長の新宮領毅さんに聞きました。

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話を聞いた人

新宮領 毅さん

公益財団法人 日本中学校体育連盟 事務局長

(しんぐりょう・たけし)玉川大学卒。38年間にわたり中学校教育に携わる。校長歴12年。現在は公益財団法人 日本中学校体育連盟 事務局長として、全国中学校体育大会の運営に携わる。

中学2年生の約16.3%がスポーツ嫌い。その理由は?

——スポーツ庁は、第2期スポーツ基本計画の目標値として、「スポーツ嫌いの子供を半減させる」を掲げています。そのねらいについて、日本中学校体育連盟ではどう考えますか。

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「第2期スポーツ基本計画」(スポーツ庁)(https://www.mext.go.jp/sports/content/jsa_kihon02_slide.pdf)

私どもは第三者ですので、スポーツ庁の真意は推し量るほかありませんが、2つの視点が考えられます。1つは、個々人の健康を維持する目的。もう1つは、国家レベルでの医療費削減です。

10代までの時間は、さまざまな興味・関心の“タネ”を植える期間です。この時期に「スポーツって楽しいな」「体を動かすのって気持ちいいな」と感じた経験がないと、健康不安が高まる40代、50代になっても、運動習慣が身につきづらい。ただでさえ仕事や家庭生活で忙しい時期ですから、「休日に体を動かそう」という発想にならないのです。

早いうちからスポーツを楽しむ気持ちの“タネ”を植えておけば、歳を重ねても「体力が落ちてきたし、公園を走ろうかな」と考えられるようになります。結果的に、メンタルヘルスの維持にもつながり、大きな社会問題となっている、うつ病などの予防にもつながるでしょう。そして、健康な国民が増えれば、医療費が減少し、国家財政的にもプラスになる。このような視点から、早めに手を打とうと考えているのが実情ではないでしょうか。

——同じく、スポーツ庁の調査によると、中学生2年生のうち16.3%が、運動やスポーツが「嫌い・やや嫌い」と回答しています。子どもが運動・スポーツを嫌いになってしまうのは、なぜでしょうか。

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スポーツ庁「平成29年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査」

考えられる理由は3つあります。

1つ目が、「怖い」気持ち。ボールが飛んでくるのが怖い、痛い思いをするのではないかという不安。こうした気持ちが原因になるケースです。3つの中では、もっとも根源的な「嫌い」に近い感情かもしれません。

2つ目は、「恥ずかしい」気持ち。うまく体を動かせないことが、コンプレックスになっているケースです。体育に限らず、小学校高学年くらいになると、周りの目が気になり始めるもの。周囲と比べて「できない」事実が、「スポーツ嫌い」に向かわせるのです。

そして、3つ目が「何をやってもだめだ」という気持ちです。とくに、チームプレイや勝ち負けが絡むと、このような気持ちになりやすい。「どうやっても勝てない」「自分がいたせいで負けた」など、さまざまなシーンで引け目を感じ、「もうやりたくない」となるわけです。

1つ目の「怖い」はさておき、「恥ずかしい」「何をやってもだめだ」は、人と比べることによって沸き上がる感情です。そのため、逆に言えば、人目のないところなら、のびのびと運動できる場合も多い。

昨今流行りの「YouTube動画でトレーニング」などは、まさにこうした、「スポーツは嫌いだけど、体を動かすのは好き」という需要をとらえているのではないでしょうか。

——同調査によると、男子に比べ、女子のほうが「嫌い・やや嫌い」と答える割合が高かったことが明らかになりました。なぜ、女子のほうが比較的、「スポーツ嫌い」になりやすいのでしょうか。

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「第2期スポーツ基本計画」(スポーツ庁)(https://www.mext.go.jp/sports/content/jsa_kihon02_slide.pdf)より。とくに女子中学生において、運動習慣の二極化が進んでいると指摘されている

現場での経験から申し上げると、女子のほうが、生理的変化に嫌悪感を持ちやすいのが原因ではないかと思います。たとえば、「汗をかくのが嫌だ」とか、「日焼けしたくない」などですね。

「比較されたくない」感情は男女に共通するものの、身だしなみが乱れることや、その姿を見られることへの抵抗感は、女子の方が比較的強い。その一端が、数字となって現れたのかもしれません。

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