学習と健康・成長

「こども衛生学」監修の専門家に聞く 災害時にも生きる知識、身につけて

2021.07.26

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夏野 かおる
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新型コロナウイルス感染症により、感染対策に関心が高まりました。こんな時期だからこそ、感染対策をはじめとした「衛生」について、親子でいっしょに学びやすいかもしれません。子どもにとって身近な話題を扱った「こども衛生学」(新星出版社)では、「おしぼりで手を拭けば菌はなくなるのか?」など、衛生にまつわるさまざまな知識を解説しています。本書籍を出版した経緯や伝えたいこと、感染を防ぐために大切なポイントについて、公衆衛生看護学の第一人者である宮﨑美砂子さんに伺います。

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話を聞いた人

宮﨑 美砂子さん

千葉大学大学院看護学研究院教授

(みやざき・みさこ)千葉大学大学院看護学研究院教授。博士(看護学)。専門は公衆衛生看護学。健康教育、保健指導、地域づくりに携わる人材の育成に取り組む。「こども衛生学」(新星出版社)の監修のほか、著書に「最新公衆衛生看護学(全3巻)」(編著、日本看護協会出版会)、「災害看護」(共著、南江堂)などがある。

「なぜ?」を理解すれば、環境が変わっても適切な行動がとれる

——「こども衛生学」では、新型コロナウイルスをはじめとした感染症の脅威に立ち向かう術を幅広く紹介しています。そもそも、書籍のタイトルにもある「衛生学」とは、どのような学問なのでしょうか。

まず、「衛生」とは、その名の通り、「生」を「衛(まも)る」知識や技術です。日本では長らく、個人が健康を保つことを「養生(ようじょう)」と呼んできました。しかし、社会が発展し、人の往来が活発になるにつれ、健康維持を個人の問題に留めるのではなく、生活環境を良くすることで健康を守ることも必要、という考えが浸透するようになりました。そこで、明治時代ごろから、新しく「衛生」という言葉が使われるようになったのです。

有史以来、人間は常に、病と死の恐怖にさらされてきました。しかし、その恐怖を乗り越えるために、さまざまな知見を蓄えてもきました。病気と生活と環境の関係を探り、その知見を人々や社会に役立てるのが「衛生学」と言えるでしょう。

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古代エジプトの遺跡からは浴室や排水管、排水溝が発見されたそう。病や死との戦いは紀元前から始まっていた

——「こども衛生学」を出版されたきっかけは。

出版のきっかけは、やはり新型コロナウイルスの影響でした。世の中が大きく混乱する中で、人々の拠り所になる、正しい知識をまとめた本が必要になるのではないか。そのように考えた担当編集者さんが、私へ相談に来てくださったんです。

加えて、担当さんがおっしゃったのは、子どもにこそ衛生の知識をしっかりと身につけてほしい、と。私自身、その思いに強く共感したため、出版するに至りました。

——なぜ、子どものうちから衛生に関する知識を身につけるのが大切なのでしょうか。

たとえば、小学校では、「学校に着いたらすぐに手を洗いましょう」と指導することがあります。もちろん、その指導は大切ですが、その際に「なぜ手を洗わなければいけないのか」を伝えないままでは、習慣として定着しない可能性があります。中には、塾などの出先で、「ここは学校じゃないから、手を洗わなくていいんだ」と考える子がいるかもしれません。

そうではなくて、きっちりと衛生の考え方を伝えていく。「通学中に、あちこち触ってきたでしょう? そのままでは、ウイルスや菌がついていて危ないよ。手を洗って清潔にしましょう」と指導すれば、学校以外の場所でも、適切な行動を取れるようになるのではないでしょうか。

——「なぜ?」を理解し、異なる環境下でも、適切な行動を取れるようにしておくのが大切なのですね。

そうです。というのも、衛生の知識が生きる場面には、学校生活や新型コロナウイルス対策だけでなく、災害時なども含まれるためです。

「こども衛生学」を監修するにあたり、ぜひ「災害」の内容を盛り込んでほしいと強く希望しました。昨今の日本では災害が頻発しているうえ、その規模が極めて大きい傾向にあります。もはや災害は「非日常」ではなく、「生活の延長上」と捉えるべき段階にきたと言えるでしょう。

こうなると、「学校に着いたら手を洗いましょう」といった、特定の行動を教えるだけではカバーしきれません。そもそも「ウイルス」や「菌」とはどのようなものかを知り、たとえば、「水が使えない場所で清潔をどう保つか」を、自ら考えなければなりません。

知識をつけることで、たとえ状況が変わっても、適切な行動を取れる子どもになってほしい。それが、「こども衛生学」に込めた思いです。

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