学習と健康・成長

じわり広がる「教育用ドローン」 何をどう学ぶ? 教材としての利点は?

2021.07.01

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夏野 かおる
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物流問題を解決するカギとして期待されているドローン。最近ではプログラミング教育・STEAM教育のツールとしても注目が集まっており、教育用の製品も販売されています。ドローンは私たちの社会や学習にどのような変化を及ぼすのでしょうか。子ども向けドローンプログラミングスクール「ドロプロ」を運営する、株式会社ハミングバードの市川さんに伺いました。

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話を聞いた人

市川 賢仁さん

株式会社ハミングバード 取締役CFO/管理本部長

(いちかわ・けんじ)明治大学法学部卒。経営学修士、デジタルコンテンツマネジメント修士。一般社団法人ドローン操縦士協会研究員、バンタン高等学院講師。KDDI株式会社にてマーケティング部門・経営管理部門に従事し、2016年4月よりドローンビジネスに携わる。現在は、お台場でドローンスクールを運営する株式会社ハミングバードの管理本部長として、経営管理・財務経理・人事労務・総務等の管理系業務全般を担当しながら、ドローンビジネスの事業企画を行う。愛機はDJI FPV。

ドローンで「空の産業革命」?明らかになったリスクとメリット

——まずは基本から教えてください。そもそも、「ドローン」とは、どのような飛行物体を指すのでしょうか?

航空法では、ドローンを含む「無人航空機」を以下のように定義しています。

【航空法第二条の22】
この法律において「無人航空機」とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦(プログラムにより自動的に操縦を行うことをいう。)により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案してその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く。)をいう。

このうち、いわゆる「ドローン」のイメージが定着しているのは、回転翼航空機(マルチコプター)。四方にプロペラがついている無人航空機で、上下左右に飛行できるだけでなく、ホバリング(空中静止)もできます。

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国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000040.html)

ドローンは、数千円〜数十万円とピンキリで、ホビーから業務用まで幅広く活用されています。インターネットショッピングの需要が高まる中で、物流問題を解決する可能性を持つ存在として、国家プロジェクトにも組み込まれています。

——いわゆる「ドローン宅配」の可能性ですね。具体的には、どのようなプロジェクトが進行しているのでしょうか。

プロジェクトの説明をするために、まずは、ドローンに関連する出来事を振り返ってみましょう。

ドローンと聞いて、多くの方が想起するのは、2015年に起きた首相官邸への墜落事件ではないでしょうか。幸いにして怪我人は出なかったものの、地上の警備だけでは充分ではない(空中から攻撃されるかもしれない)ことを強く印象づけた事件です。これを契機に、さまざまな規制や法整備が進められました。具体的には、航空法が改正され、先述したドローンの定義と、飛行時のルールが定められたのです。

一方で、ドローンの可能性が注目され始めたのもこの年でした。国土交通省がまとめた下の図をご覧ください。

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国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_fr10_000041.html)

この図に示されているようにドローンは、①空港周辺、②人口集中地区、③地上150m以上の空域では、特別な許可が必要となります(※)。

※令和3年6月1日より、これらに加えて④緊急用務空域での飛行が規制対象となった。この空域では、上記3点での飛行許可があっても飛行させることはできない。

ここで注目が集まったのが、③地上150m以上の空域というポイント。ドローンが登場するまでは、150m未満の空域を飛ぶのは鳥くらいだったため、未開拓の領域として残されていたのです。

この空域を上手に生かせば、空撮や点検、測量、物流など、さまざまな形でドローンを活用し、スマートシティ化を進められるのではないか。そうした機運が高まり、2015年は「ドローン元年」と呼ばれるようになりました。同時に、ドローンが起こす社会の変革を「空の産業革命」と呼び、官民一体となって進めていこうとする動きが出てきました。

それに伴い、実際にやるべきことを整理した資料が、「空の産業革命に向けたロードマップ」です。

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首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/pdf/siryou14.pdf)

ドローンを活用した「空の産業革命」を成し遂げるには、各種の環境整備や、ドローン自体の性能向上、部分的な規制緩和など、さまざまな角度から準備を進める必要があります。変革を絵に描いた餅にせず、本気で社会実装していく。そのような姿勢が、このロードマップに示されていると言えます。

——規制緩和の話が出ましたが、空域以外では現状、どんな規制があるのでしょうか。

まず、航空法の対象となるのは、200g以上のドローンです。したがって、200g未満のホビードローンには、特別な規制はありません。もちろん、常識的な配慮として、人や動物、建築物に危害を加えないかどうか、他人のプライバシーを侵害しないかどうかには慎重になる必要がありますが、あくまでも「許可」に関していえば、200g未満のドローンには必要ありません。

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200g未満の小型ドローン

同じく、屋内や網などで四方・上部が囲まれた空間で飛ばす場合であれば、重量に関係なく、航空法の適用対象外となります。つまり、規制の対象となるのは、200g以上のドローンを、屋外で飛ばす場合となります。

航空法の対象となるドローンでは、先述のとおり、①空港周辺、②人口集中地区、③地上150m以上の空域で飛ばすのに許可が必要です。また、(A)夜間飛行、(B)目視外飛行(操縦者がドローンを目視できない状況での飛行)、(C)30m未満の飛行、(D)イベント上空飛行、(E)危険物輸送、(F)物体投下を行う際にも、地方航空局長の承認を受ける必要があります。

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国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)

——なるほど。現行法だと、「夜に食事のデリバリーを頼みたい」などの用途は難しそうですね。

ええ、そうなります。ドローンを物流に組み込むには、その都度許可を取らなくても、(A)夜間飛行、(B)目視外飛行、(C)30m未満の飛行、(F)物体投下を行えるように環境整備や規制緩和を行う必要があります。

とはいえ、ドローンの市場規模は徐々に伸びています。インプレス総合研究所の発表によると、2020年度のドローン市場はおよそ1,840億円。これが2025年になると、6,468億円に及ぶのではないかと推測されています。すでに、「点検」用途ではドローンが広く活用されており、今後も伸びていくでしょう。総論として、細かな規制がありながらも、確実に注目を集めているプロダクトと言えるのではないでしょうか。

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