新しい教育のカタチを考える

「東大、ボカロP、絵師。すべては等価」茂木健一郎・屋久島おおぞら高校長

2021.07.08

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阿部 花恵
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インターネットを活用した通信制高校「N高等学校」は開校5年で生徒数1万6000人を突破。オンライン授業を導入する学校も急増する中で、大学を頂点としたヒエラルキーが構築されていた日本の教育観にも変化が現れてきています。これからの時代に、本当に必要とされる学びの力とは? 2021年に屋久島おおぞら高等学校の新校長に就任した脳科学者の茂木健一郎さんにお話を聞きました。

Kenichiro_Mogi

話を聞いた人

茂木健一郎さん

脳科学者・屋久島おおぞら高等学校校長

(もぎ・けんいちろう)1962年東京生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学理学部、法学部を卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程を修了、理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、脳と心の関係を研究するとともに、様々なフィールドで活動している。

「通わない学校」の選択肢が広がってきた

――脳科学者である茂木さんが、屋久島おおぞら高等学校の校長に就任されたのはどのような経緯があったのでしょうか。

2013年に特別授業の講師として招かれたのがきっかけです。その後も、屋久島おおぞら高校の理念に共感して、校歌をつくるお手伝いなどいろんな形で交流を続けていましたが、まさか自分が校長になるとは、まったく考えていませんでしたね。

屋久島おおぞら高校は、毎日の通学が必要ない通信制高校です。「広域通信制」ですから、全国どこからでも入学できる。年に1回の集中スクーリング(屋久島で行われる面接指導と特別活動)への参加以外は、自宅で学べるのが特徴です。

ひと昔前、学校って通うのが当たり前の場所でしたよね。言い方を変えれば、「見える範囲の選択肢からしか選べない」ものだった。

でも今の時代はもう違います。高校から先の選択肢が、どんどん広がってきている。全日制を前提とした従来の「高校」のあり方にマッチしない生徒さんにとって、通信制高校は素晴らしい選択肢にもなりえます。

――角川ドワンゴ学園が運営するネット高校「N高」「S高」への注目度の高さからも、そういった流れは感じられます。

大学入試を前提に考えると、文科省がつくった日本の高校のカリキュラムってそれ自体はよくできているんですよ。でも、そのスタイルに馴染めないとか、飽き足らないとか、いろんな意味で相性がよくない子もやっぱりいるんです。

脳科学を研究する立場からすると、興味深いことにその人の抱える「課題」と「可能性」は表裏一体のことが多いんですね。

つまり、ある生徒さんが「この環境に馴染めない」「もっと違う学び方をしたい」と感じているのなら、そこにその人の「個性」が現れているということ。

学校と生徒の関係性にミスマッチが起きたとき、従来のやり方を一方的に押し付けるのではなく、ちょっと違う方法を提供したり、違う角度からサポートしてみたりすると、驚くほど伸びるケースが実はたくさんあるんです。

ところが、今の日本の社会では「高卒資格」がなければ、その先の学びの可能性がぐっと狭まってしまう。通信制高校はそういった子たちが、自分に合ったカリキュラムで高卒資格を得るための場としても重要な役割を果たしているのです。

――海外でもホームスクール(通学せず、家庭を拠点に学習を行うこと)の事例は多いのでしょうか。

とくにアメリカが盛んですね。全米で約200万人以上の子どもたちがホームスクール生に該当すると計算されています。

一般にアメリカも日本も「親の学歴や世帯年収が高いと、子の学歴も高くなる」傾向が明らかですが、面白いことにホームスクーリングの子どもにはそれが当てはまらないんですよ。「家庭の世帯年収に関係なく、ホームスクーリングのほうが子どもの成績が良くなる」というエビデンスもありますし、1日も学校に通った経験がない子がハーバード大学に合格したケースもあります。

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