「1人1台」の生かし方

ネットやゲーム「時間のルール作りは悪手」 ICT教育、豊福晋平さんに聞く家庭での心構え

2021.07.05

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葉山 梢
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全国の小中学生に1人1台のパソコンやタブレットなどICT(情報通信技術)端末を配る、国の「GIGAスクール構想」が進められています。既にほとんどの自治体でパソコンなどの納品が完了し、家庭への持ち帰りも始まりました。保護者はこの構想とどう向き合っていけばいいのでしょう。家庭での心構えやICT機器の活用法について、教育の情報化に詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授に聞きました。

豊福晋平

話を聞いた人

豊福晋平さん

国際大学GLOCOM准教授

とよふく・しんぺい/1967年北海道生まれ。横浜国立大学大学院教育学研究科修了、東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程中退、95年から国際大学GLOCOMに勤務。専門は学校教育心理学・教育工学・学校経営。長年にわたり、教育と情報化のテーマに取り組む。

学校の日常のデジタル化を

――GIGAスクール構想の目的や目指す子ども像をどのように捉えていますか。


「1人1台」というのは、子どもが常時使えるという状態です。これまでの「3人に1台」共有で使うといった状況とは全く違います。学校の保管庫にしまったままではもったいない。教育の何を変えるのか真剣に考える必要があります。

昨年、コロナウイルスの感染拡大による突然の休校で、学校は大混乱に陥りました。登校できない、対面して伝えられない、紙を持って帰れない、電話しようにも回線が1校に2本しかないといった状況で、子どもに接触できず、結果的にほったらかすことになってしまった学校が多くありました。そんな中でも、デジタル化が進んでいた学校では大きな混乱は起きませんでした。厳しい状況下でも、子どもや家庭との関係を断ち切らないですむ潜在的な力が備わっていたのです。

最近も大阪市内の小中学校がオンライン授業をするよう求められましたが、十分に対応できなかったと言われています。でも、いきなり授業まではできなくても、ICTを活用して児童・生徒や家庭とつながるチャンスがあったことには大きな価値があると思います。

学校には、これまで対面と紙でやっていたことをデジタルに移行することから始めましょうと提案しています。紙で配っていた手紙や資料をメールやメッセンジャーなどで送る。手書きの連絡帳はデジタル連絡帳に置き換える。宿題の提出や返却もオンラインで。そこから子どもも教員もICTに慣れ、利用頻度を上げていく。私は「学校の日常のデジタル化」と言っています。

慣れてくれば、ICT機器を四六時中使うことをためらうべきではありません。むしろ望ましいことです。鉛筆を使うかペンを使うかを考えるのと同じように、子ども自身が必要だと感じる場面で、文房具のようにICT機器を使いましょう。子ども自身が自分の資質を磨くための道具、自分の将来を切りひらくための武器だと考えて活用していくのです。

2018年のPISA(国際学習到達度調査)のICT活用調査によると、日本の子どもは「ネット上でチャットをする」「1人用ゲームで遊ぶ」が全体平均より多い一方で、インターネットで調べ物をしたり創作物をネットで共有したりといった用途は著しく低かった。情報を消費したり気晴らしをしたりするだけでなく、ICTを活用することで大人になったときに「自分はこれができる」と自信が持てることを見つけてほしい。それが、GIGAスクールに託された夢だと思います。

文房具のようにICTを使って 豊福晋平さんに聞く「GIGAスクール構想」家庭での心構え

――家庭でもこれまで以上にICTが身近になります。保護者はどう受け止めればいいでしょうか。

ある自治体の会合で、保護者が複雑な心境を話してくれました。これまでは学校から「ICT機器はできるだけ使うな」と言われていたのに、いきなりパソコンやタブレット端末を家に持って帰ってくるのだから戸惑うのは当然でしょう。家庭の中のことまで学校から指示されるのは嫌だという人もいます。以前から学校の対応に納得していないんですよね。

これまでのように学校が管理・統制するやり方でいいとは思えません。米国の多くの学校で使われているコモンセンス・エデュケーション財団の「デジタル・シチズンシップ・カリキュラム」という、子どもがICTを活用するためのスキルを学ぶ教材があります。教材は、ICTをいつ、どんなことに、どれくらい使うかは人それぞれ違うのだから、子ども自身がそのバランスを決め、振り返って調整するものだという思想が貫かれています。子どもが自律してICT機器を道具として使いこなせれば何の問題もないのです。ICTの負の側面ばかりに目を向けず、むしろ、大人が規制することが子どもにマイナスの影響を与えないか、という点についても考えてほしいと思います。

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