「1人1台」の生かし方

パソコンは子どもが管理 意欲もスキルも向上 長野県喬木村

2021.07.14

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柿崎明子
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パソコンを学校の授業から日常使いにしたことで、子どものスキルが格段に向上した。長野県南部にある人口6千人の山村、喬木村の先進的な取り組みとは。
※写真は、中学校の理科の授業で、資料を検索しながら発表スライドを作る生徒(喬木村提供)

放課後になると、長野県喬木村の小中学生はランドセルや通学バッグにマイ・パソコンをしまう。今ではあたりまえの光景だが、ICT(情報通信技術)を導入した当初はそうではなかった。

人口減や学校の統廃合に悩んでいた喬木村が、ICTを小中学校に導入したのは、2015年のこと。文部科学省の「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」に加わったことがきっかけだった。

村の小中学校は喬木第一小と第二小、喬木中の3校。とりわけ第二小は児童数が38人と少なく、統廃合の検討対象になっていた。「しかし存続を望む声が強く、ICTで小規模校の課題を解決しようと動き出しました」(喬木村教育委員会教育CIO補佐・長坂亮介さん)

ふるさと納税で得た資金を使って、中学生には1人1台、小学生は1クラス分のノートパソコンを学校に配備した。他校や海外との積極的な交流が評価され、2018年には全国ICT教育首長協議会の「日本ICT教育アワード文部科学大臣賞」を受賞するなど、村の取り組みは高く評価されてきた。

しかし、昨年のコロナ禍では課題が浮き彫りになった。オンライン授業ができなかったのだ。長坂さんは「これまでの活用は学校の中だけで、ICTの利点を生かし切れていませんでした」と振り返る。

学校の授業と家庭学習がつながる

そこで、GIGAスクール構想でパソコンが新しくなったことをきっかけに、これまでの方針を転換。児童・生徒にパソコンの管理を任せ、授業以外や自宅での利用を認めることにした。その結果、「授業で取り組んだ課題の続きを自宅でやったり、授業で気になったことを検索したり、学校と自宅での学びがつながりました」(長坂さん)。宿題も紙からデジタルに変わった。学習の管理にはGoogleの「クラスルーム」というソフトを使用しており、教員側も課題の収集や採点、コメントなどのフィードバックが容易になったという。

中1の息子を持つ市瀬博さんは「パソコンを自宅に持ち帰るようになってから、自主的に学習するようになりました」と話す。息子は調べ学習をしたり、パソコンにインストールされた教材を使ったりしているという。

市瀬さんは「ICTを活用することで、今まで地方ではできなかったような学習もできるようになった。いろいろなことに挑戦してほしい」と期待する。

中学校の生徒会活動で生徒が作った企画書やポスターをクラウド上で共有し、先生が内容を確認するなど授業以外での活用も進んでいる。

学校と保護者との連絡は、いまのところ健康管理のやりとりなど一部にとどまっているが、いずれは学校便りや欠席の連絡もデジタル化していく予定だという。

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