「探究」で高大接続

高槻中高・工藤剛校長「高校教育が高校だけで完結する時代は終わった」

2021.07.13

author
中村 正史
Main Image

高大接続改革についての10年来の議論は、結局、大学入学共通テストを導入することで決着しました。しかし、高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。大学と連携した様々なプログラムを展開する高槻中学・高校の工藤剛校長は「課題研究は本物でなければならない」と強調します。(写真は、南太平洋のパラオでフィールドワークをする高槻高校の2年生=同校提供)

工藤 剛さん

話を聞いた人

工藤 剛さん

高槻中学校・高等学校校長

(くどう・つよし)高槻高校卒、関西学院大学法学部卒、同大学院法学研究科修士課程修了。1996年、高槻中学・高校教諭(英語科)になり、教頭、副校長を経て2018年から校長。学校法人大阪医科薬科大学理事。

課題探究は授業内の作り物ではいけない

――文部科学省のSSH(スーパーサイエンスハイスクール)と、SGH(スーパーグローバルハイスクール)の両方の指定を受けています。

高槻高校はグローバル教育と先進的なライフサイエンス教育が特色で、自ら課題やテーマを設定して考察を深める探究型学習に力を入れています。SSHは2014年度から5年間の指定を受け、19年度から2期目に入りました。大阪府下の私立高校でSSHに指定されているのは本校だけです。SGHは16年度に指定され、終了した今年度からはSGHネットワーク参加校に選ばれており、SGHのロゴマークは現在も使えます。SSHとSGHの両方に指定された学校は珍しいと思います。

――大学と連携したプログラムが非常に多いことに注目しています。

SGHとSSHの二つの看板の下に、中3からGA(グローバルアドバンスト)、GS(グローバルサイエンス)、GL(グローバルリーダー)の三つのコースに分かれ、中3~高2は知的探究力や活用力を高める時期と位置づけ、大学との連携をいろいろと行っています。

GAコースは「グローバルヘルス」をテーマに、京都大学の分野横断型の組織であるグローバルヘルス学際融合ユニットと連携しています。外国人研究者によるグローバルセミナーを校内で開き、ケニアやアフガニスタンなど、アフリカやアジアからの留学生に来てもらって、母国の母子保健やエイズ治療などの話をしてもらい、生徒たちの課題研究についてアドバイスしてもらっています。国を背負って日本で研究している人たちの姿を見て、生徒たちは学ぶことに対する刺激を受けます。訛りのある英語での話を1時間、中3から高2までの生徒が一緒に聞いて、質問の時間になると、高校生が次々に手を上げます。それを中3が見て、「あの英語を聞き取ってこんな質問をするんだ」と感心し、異年齢間の化学変化が起きます。

高2は南太平洋のパラオでフィールドワークをします。人口2万人の小さな国で、食文化が欧米化して肥満が増え、平均寿命が50歳ちょっとしかなく、健康が国をあげての大きな課題になっています。SGHの申請時に、大阪大学のグローバルコラボレーションセンターが現地でフィールドワークをしていると聞いて、責任者だった三田貴准教授(現・京都産業大学教授)に会いに行き、指導を受けてプログラムをつくりました。三田教授には現在、本校の国際教育顧問をお願いしています。

パラオでは、保健省や教育省で大臣や局長から話を聞いたり、国立病院で治療の状況を聞いたり、現地の高校生の家を訪問して水道やごみ処理の状況を聞いたりしています。今年3月には、提言書を英語でまとめ、駐日パラオ大使に渡しました。

この活動に熱心だった生徒が、京都大学の特色入試でパラオでの活動をアピールして合格した例もあります。

高1の2月には台湾研修を行い、高校のトップ校や国立台湾大学に行って、課題研究をしてきたことを英語で発表します。大学教授からは、感染症対策などに容赦ない質問が浴びせられます。それにどれだけ耐えられるかが試されます。

――生徒たちは課題研究の大きな刺激になるでしょう。

課題研究は少しでも実社会に影響を及ぼすことが大事です。それによって生徒たちのモチベーションが上がります。国の大使に英語の提言書を直接、届けられるようになれば、授業時間内の作り物とは明らかに違います。国際プログラムを掲げる学校は少なくありませんが、その内容が本物でなければいけません。

生徒たちは仲間と協力してプロジェクトを進め、壁にぶつかってもへこたれなくなります。非認知能力(意欲や創造性、コミュニケーションなどの能力)が養われます。現代のような先行きが不透明な時代には、大事なことではないでしょうか。非認知能力は、学校行事や部活動の中でも養われますが、うちは学校の教育の中に落とし込んでいます。

パラオの国務大臣と面談する生徒たち=高槻高校提供
パラオの国務大臣と面談する生徒たち=高槻高校提供

新着記事