「探究」で高大接続

高槻中高・工藤剛校長「高校教育が高校だけで完結する時代は終わった」

2021.07.13

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中村 正史
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高大接続改革についての10年来の議論は、結局、大学入学共通テストを導入することで決着しました。しかし、高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。大学と連携した様々なプログラムを展開する高槻中学・高校の工藤剛校長は「課題研究は本物でなければならない」と強調します。(写真は、南太平洋のパラオでフィールドワークをする高槻高校の2年生=同校提供)

京大の国際会議でフィールドワークを発表

――大学の先生が高校で出前授業するというレベルではなく、本格的な高大連携ですね。

私が副校長だった時には、京都大学の教授から、「Global Health101」というイエール大学の教科書の翻訳に高校生も加わらないかとお誘いをいただきました。3人の生徒が手を上げたので、夏休みに出てきてもらって、医学専門用語が比較的少ない「予期せぬ疾病」という1章分を翻訳しました。GAは文理融合のコースですが、このうちの1人は医学部に進みました。

京都大学はグローバルヘルスの国際会議を毎年12月に芝蘭会館で開いていて、海外からエボラウイルスの世界的権威など第一線の研究者が集まりますが、そこにうちの生徒を連れて行きます。会場に掲示されたA0版の発表ポスターを見せて、第一線の研究者がどんなものをつくっているか、生きたサンプルとして見せてもらっています。夜のレセプションにも参加させていただき、2018年には「スペシャル・プレゼンテーション」として15分を与えられ、海外のトップの研究者がいるところで、パラオでのフィールドワークを発表しました。

年度末には、近隣の十数校の高校を招いて「グローバルヘルス高校生フォーラム」を本校で開いています。海外の研究者に来てもらい、水や環境、食料などテーマごとに高校生がグループをつくり、外国人研究者がつきます。昨年の基調講演は、WHO(世界保健機関)神戸センター長にしてもらいました。いかに本物志向でいくかです。

校内で開かれる「グローバルヘルス高校生フォーラム」で海外の研究者の発表を聞く生徒たち=高槻高校提供
校内で開かれる「グローバルヘルス高校生フォーラム」で海外の研究者の発表を聞く生徒たち=高槻高校提供

――GA以外のコースはどんな高大連携のプログラムがありますか。

GLコースは、クリティカルシンキング(批判的思考)とアントレプレナーシップ(起業家精神)を養成します。立命館大学経済学部の教授に授業をしていただき、米国シリコンバレーに行って研修するプログラムをつくりました。昨年の春休みに行く予定でしたが、新型コロナウイルスで止まっています。

またコースに関係なく、スタンフォード大学と本校が単独で連携して共同開催する「グローバルヘルス」のオンラインプログラム(全8回、各60分)があり、高1の希望者が半年間、受講します。スタンフォード大学医学部の教授クラスが、世界の人々の健康を支えるための実践例や、幹細胞をはじめ最先端の研究を話してくださいます。これも本物の内容ですから、生徒のモチベーションが高まります。

アクティブラーニングについては、京都大学高等教育研究開発推進センターの松下佳代教授に年2回、教員研修をしていただいています。

――医学部に進む生徒も多いです。同じ学校法人の大阪医科薬科大学と連携した様々なプログラムがありますね。

大阪医科薬科大学は徒歩8分くらいの距離なので、大学の講堂で授業を受けます(現在はコロナ対応のため高槻中高で実施)。基礎医学講座は、高1で医学部進学を考えている生徒は必ず受けるようにしており、全8回(各90分)の講義で解剖学や生理学、病理学などを学びます。例年100人くらいが受講し、大学から修了証が出ます。

中3は希望制の医学部実習があり、教授の講義、白衣を着ての中央手術棟の見学、医学生から聴診器の使い方や縫合の仕方の指導などがあります。

医学部には、偏差値が高いから行くという世の中の風潮がありますが、そういう理由で進んでほしくありません。やはり医学を通して、世のため、人のために自分はこうしたいと心から思っている人に、医師になってほしいです。講義の中で、なぜ医師になったのか、いま何をしているのかを語るので、医師になるとはどういうことかを生で知る機会になります。

基礎医学講座は医学部進学を目指す生徒が受講する。大阪医科薬科大学の教授らの話を聞き、医師になるとはどういうことかを知る=高槻高校提供
基礎医学講座は医学部進学を目指す生徒が受講する。大阪医科薬科大学の教授らの話を聞き、医師になるとはどういうことかを知る=高槻高校提供

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