「探究」で高大接続

高槻中高・工藤剛校長「高校教育が高校だけで完結する時代は終わった」

2021.07.13

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中村 正史
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高大接続改革についての10年来の議論は、結局、大学入学共通テストを導入することで決着しました。しかし、高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。大学と連携した様々なプログラムを展開する高槻中学・高校の工藤剛校長は「課題研究は本物でなければならない」と強調します。(写真は、南太平洋のパラオでフィールドワークをする高槻高校の2年生=同校提供)

出る杭を伸ばすにはどうすればいいか

――どのような経緯でこうした教育をするようになったのですか。

主幹だった2012年に、全国の高校教員30人ほどで米国の大学を視察したことが、大きなきっかけになりました。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)、女子大トップのスミス・カレッジ、西海岸ではカリフォルニア大学バークレー校、スタンフォード大学などを訪問し、アドミッションズオフィスの責任者と話しました。そこで米国の大学がなぜ探究に取り組んでいるのか、全寮制にしているかがわかりました。GAFAがなぜ出てきたのか、日本の教育スタイルでは突き抜けたものが出てこないことがわかったのです。

出る杭を打つのではなく、伸ばすにはどうすればいいか。そのためには、学校であえてしんどいこと、回り道をさせることです。日本には回り道をさせる仕組みがありません。それで学校としても我流ではなく、SSH、SGHという国にオーソライズされた事業の指定を受けて、探究に力を入れました。

――学校としても、しんどいことに乗り出したということですか。

高槻高校はある時期まで大学受験が目的の学校になっていました。合格実績が出ているからいいと、同じ教育スタイルを続けていました。しかし、京都市立堀川高校が探究科を設けるなど、近隣の学校が特色ある教育を出してきて、本校は相対的に埋没するようになりました。私学でもあり、教育の特色をはっきり出さなければいけない、何ができるのだろうかと考え、手探りで教育を変えてきました。

特色の一つが英語教育です。先に紹介した様々なプログラムも、英語力が根底になければ生かせません。ベルリッツの英会話をいち早く導入し、中3では一人一人が週2時間、オンラインで英語で会話します。昨年度からは日本で初めてケンブリッジ大学出版のベター・ラーニング・パートナー指定校になりました。英語教育は、学ぶ目的をつくることが大事です。

――一連の入試改革の議論では、英語の4技能がテーマになりました。

英語教育には英語を習得して何をするのかという縦軸が必要です。4技能は横軸が延びるだけです。必要なのは縦軸で、立体化した状態で英語教育を進めないといけません。

――高校の学びを大学の学びと接続するという意味で、高槻高校の試みは高大接続の典型例だと思います。

大学の先生によく来ていただきますが、「大学でやっていることを高校で先に行っている」と言われます。高校の教育が高校で完結する時代は終わっていると思います。高校でのいろんな学びの機会が、生徒の将来に何らかの形でつながれば、それでいいです。いろいろなメニューを用意することが学校の役割です。こういうのがあるけど、やってみないかと、生徒に声をかけることです。

本校はグローバル教育とライフサイエンス教育の二つの軸をしっかり進め、日本を背負う生徒を生み出していくつもりです。

イエール大学の教科書「Global Health101」の第14章を生徒が翻訳した(2017年9月発行)
イエール大学の教科書「Global Health101」の第14章を生徒が翻訳した(2017年9月発行)

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