「探究」で高大接続

桜美林大・高原幸治入学部長「高校生向けに探究プログラムを始めた理由」

2021.07.15

author
中村 正史
Main Image

「高大接続」という言葉が1990年代後半に出てきてからしばらくの間、それは大学にとって入試に合格して入ってくる学生をどう教育するかという問題でした。2010年代半ばから出てきたのが、入試後では遅い、出願前から高校生に関わろうという動きです。ここに来て、大学側が注目しているのが、高校の「探究」の学びです。高校生向けに探究プログラムを提供し、22年度入試から探究入試を始める桜美林大学の高原幸治・入学部部長(学長補佐)にその背景を聞きました。(写真は、子どもの居場所を地図にするプログラムで、高校生にオンラインで話す桜美林大学の教員=同大提供)

高原幸治

話を聞いた人

高原幸治さん

桜美林大学入学部部長、学長補佐(入学/高大連携担当)

(たかはら・こうじ)桜美林大学大学院・大学アドミニストレーション研究科修士課程修了。2002年、学校法人桜美林学園に入職。国際交流、改組準備室、就職支援、学生支援などの部署を経て、18年から入学部部長。

高校生がいろんな体験をし、考える機会が必要

――来年度から高校の新学習指導要領で「総合的な探究の時間」が導入され、「探究」が注目されています。桜美林大学は「ディスカバ!」という探究プログラムを高校生向けに提供しています。高校教育の中に大学が入っていくということですか。

高大連携を強化していくことになります。「ディスカバ!」は入学部が主導して2019年から始めた高大連携プロジェクトで、学問分野を探究するプログラムを桜美林大学の教員らが、これまで1万人近くの高校生に届けてきました。例えば、環境問題を社会学で分析する、ディズニーの新商品をマーケティングの視点から提案する、子どもの居場所を地図にするといった内容です。

20年は、コロナ禍でも取り組みを止めることなく、オンライン実施の仕組みを立ち上げました。春休みに10本、夏休みに25本のプログラムを提供し、約2700人の高校生が参加しました。参加費は一部を除いて無料です。高校生・中学生が参加対象ですが、主に高校2年生が多いです。

いろんな高校から問い合わせが来るようになり、高校教員と探究の勉強会を始めました。高校でも「総合的な探究の時間」の授業支援をしてもらえないかとの要望が出てきて、昨年から「ディスカバ!for School」という高校への出張プログラムを始めました。先取りした総合探究の時間で行うことが多いです。

――高校への出張プログラムはどんな内容ですか。

高校の事情に合わせてオンラインか対面で講師を派遣し、3~5回ほど行う形式が多いです。生徒は動画で探究のテーマを確認し、グループワークなどで調査・考察・まとめを行い、発表します。最後に講師がフィードバックします。現在、25校ほどが参加しており、約5000人の生徒が受講しています。

「ディスカバ!」はディスカバリー(発見)からつくった造語ですが、自分を発見して成長するという意味と、「バ」には機会を提供する「場」という意味を込めています。

――どういう経緯でこのプログラムを始めたのですか。

私はアドミッションセンター(現・入学部)からキャリア開発センター、学生生活支援課に異動し、15年に7年ぶりに入試事務室(現・入学部)に戻りました。AO入試(現・総合型選抜)の出願書類を読んで気づいたのは、7、8年前に比べて内容が二極化していることでした。志望理由や4年間の学修計画などがきちんと書けている高校生と、書けていない高校生との差が広がっていました。キャリア支援や学生支援の部署にいたので、就職活動で学生が自己分析する際、積み重ねた経験がどれくらいあるか、大学が提供するプログラムをどれくらい活用したかが、書く内容を左右することを知っていました。

高校生が書けていないというのは、自己分析できていないか、インプット(高校時代の経験)が足りないかのどちらかだと思いました。桜美林大学はAO入試を導入したのが首都圏では慶應SFCに次いで早く、全体の3割くらいをAO入試で採っていたので、対応する必要があると考え、16年から「AO・推薦準備セミナー」を始めました。90分のワークショップですが、3回開催して約2000人の高校生の参加がありました。

この経験から、高校と大学をつなぐ接続プログラムがないといけないことを痛感しました。高校生は自分を振り返ろうとしても、高校時代にしたことがなかなか出てきません。それで受験対策としての準備セミナーというアウトプットだけでなく、高校生がいろんなことを体験し、考えるインプットのプログラムが必要だと思い、17年から大学の学問分野を高校生に届ける「じぶん探究プログラム」の提供を始めました。受験対策としての入試準備セミナーというアウトプットと、探究プログラムというインプットを統合して、19年にブランド化したのが「ディスカバ!」です。

上野学園高校で行われた「ディスカバ!for School」の最終発表会で、発表を真剣な表情で聞く生徒たち=桜美林大提供
上野学園高校で行われた「ディスカバ!for School」の最終発表会で、発表を真剣な表情で聞く生徒たち=桜美林大提供

新着記事