「探究」で高大接続

「元祖・探究」堀川高校・濵田悟さん「教科学習との二項対立でとらえると難しい」

2021.07.19

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中村 正史
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高大接続改革についての10年来の議論は、結局、大学入学共通テストを導入することで決着しました。しかし、高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。1990年代にいち早く探究科を設置して進学実績を飛躍的に伸ばし、「奇跡の学校」と呼ばれた京都市立堀川高校の授業「探究基礎」の責任者である濵田悟・研究部部長に、「元祖・探究」の現在の課題や探究への考えを聞きました。(写真は、探究基礎で相談しながら作業する堀川高校の生徒=同校提供)

濵田 悟
濵田 悟

話を聞いた人

濵田 悟さん

京都市立堀川高校研究部部長、教諭(理科)

(はまだ・さとる)京都大学大学院工学研究科修士課程修了。2004年、京都市立紫野高校教諭。18年から堀川高校教諭。2021年から同校研究部部長。「探究基礎」の責任者。

探究がすべての軸になっていることに驚いた

――堀川高校は1999年に人間探究科・自然探究科を設置し、いち早く探究の学びに取り組んできました。来年度から導入される高校の新学習指導要領で「探究」がキーワードになっていますが、どうとらえていますか。

生徒が主体的に学び、自分の興味・関心に向き合うには、時間がかかります。教員は待つことが必要ですが、無意識に誘導してしまいがちです。

探究と教科の学習の両方を生徒に実感させるのは難しいです。探究は自分で課題を設定し、方策を立てて調査すること、教科の学習はしっかりした知識を身につけることですが、探究はしっかりした知識がないと、独りよがりの思いつきになりかねません。ですから教科の学習をしっかりしないといけません。

一方で教科の学習も探究的に考えることをするようになりました。かつてのような教科学習と探究との壁はなくなりつつあります。両者は重きを置くところが違うだけです。

探究科ができて間もない頃から「二兎を追う」と言っていました。教科学習も探究も追うという意味です。しかし、最近は校内で強く言わなくても通じるくらい、二つがつながってきたという意識が高まってきたと思います。

しかし、生徒がこうした実感をどこまで持っているかが課題です。なかには、普段のテストの点数はいいが、探究はさっぱりという生徒もいます。

――高校によっては探究に熱心な教員が、受験勉強に力を入れたい進路指導部の教員と対立するという話もよく聞きます。

堀川高校は教育活動全般の軸に探究があります。例えば文化祭の出し物をクラスで作る時に、何をしたいか、どうすれば実現するかなどと、探究的に進めています。宿泊研修や学校説明会の内容も生徒が企画します。生徒たちには、部活動などを含めて、「すべてが探究だ」と言っています。

私はこの高校に来て4年目ですが、探究がすべての軸になっていることに驚きました。まず年度初めの忙しい時期に授業「探究基礎」の教員研修会があります。教員約70人のうち3分の2は探究基礎を受け持ち、進路指導の教員も探究基礎を担当します。生徒と担任との個人面談では「探究は何やってんのや。今はどういう感じ?」と探究の話題が定番になっています。

教科の学習で身につけた知識を探究で活用する場面がたくさんあってほしいです。探究で活用することをモチベーションにして、教科の学習をしたいという気持ちが自然に起こるのが理想です。

ただ、現実の生徒は日常生活やニュースの中から興味・関心や課題を見つけようとするので、実用的なテーマになりがちです。高校生の知識や高校の設備では、最先端の研究は難しい面もあります。なるべくシンプルなモデル化を行って、極端に言えば一つの要素に的を絞って、「この要素が及ぼす影響についてはこう言える」という結論を見いだすようにする方が、実験条件の設定や実験の実現性の面でも容易になるし、論理展開もしやすくなります。研究成果を出すことよりも探究の過程を学ぶことを重視しているので、小さな一歩でもよいから確実な一歩にしてほしいと思っています。

堀川高校の校舎
堀川高校の校舎

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