「1人1台」の生かし方

ゲームの試行錯誤が学びに 毎日10時間プレーした経験者に聞く

2021.07.21

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葉山 梢
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小学2年から約10年間にわたって不登校で、毎日10時間もゲームをプレーしていたという起業家の小幡和輝さん。その経験を生かして、ゲームをオンラインで教える家庭教師の派遣会社「ゲムトレ」を営む小幡さんに、子どもがゲームとうまくつき合うにはどうすればいいのか聞きました。

小幡和輝

話を聞いた人

小幡和輝さん

おばた・かずき/1994年、和歌山県生まれ。約10年間の不登校を経験。定時制高校に進学し、高校3年で起業。地方創生、不登校支援などに取り組み、2019年、ゲームをオンライン家庭教師が教える「ゲムトレ」を設立し、日本アントレプレナー大賞エンタメ部門グランプリを受賞。著書に「ゲームは人生の役に立つ。」(エッセンシャル出版社)など。

囲碁・将棋はOKなのにゲームはダメ?

――最近の子どもたちについて、どのように見ていますか。

ゲームが子どもたちの共通言語になっています。サッカーがうまいやつがかっこいいというのと同じように、人気のオンラインゲーム「フォートナイト」がうまいやつはかっこいいという感覚があります。今の子どもたちが大人になるころには、会社のゴルフコンペはなくなり、フォートナイト大会になるのではないでしょうか。

そして、みんなめちゃくちゃゲームがうまい。水準が上がっていると感じます。フォートナイトのプロゲーマーは10代がほとんどです。フォートナイトは敵を攻撃しながら建物を作るなど、同時にやることがたくさんあるゲームなので、10代の頭の回転の速さにはかなわないですね。メールやチャットといったテキストでコミュニケーションを取るのも上手です。

気になるのは、すぐに攻略法を検索することです。僕らの世代は試行錯誤しながら自分で攻略法を見つけましたが、今はYouTubeを検索すれば答えがすぐに出てきます。中にはRPG(ロールプレイングゲーム)も攻略法を見ながらやっている子もいて、もったいないと感じます。できなくて悔しくて答えを見たくなる気持ちは分かるけど、自分で探求することが大事です。

プロゲーマーをはじめとするすごい人たちの情報や、SNSで「いい成績が取れた」という報告をたくさん目にするからか、必要以上に劣等感を抱えている子もいます。SNSなんてひと握りの人が良いところだけ切り取ったもの。もしかしたら「盛った」のかもしれないのに、子どもは意外と分かっていません。そこは大人が教える必要があると思います。

――小幡さん自身はどのようにゲームとつき合ってきましたか。

3歳くらいの時、パソコンでパズルゲームの「ぷよぷよ」をしたのが始まりです。5歳上のいとこがゲーム好きで、それまでにもRPGの「ドラゴンクエスト」を横で見たりしていました。6歳で携帯ゲーム機の「ゲームボーイ」を買ってもらいました。

僕にとってゲームは、他者とのコミュニケーションツールであり、ルールから攻略法を見つけ出す「学習コンテンツ」。生まれつき弱視で、目の訓練の一環で医者にゲームを勧められたのがきっかけだったので、親から時間を制限されることはありませんでした。不登校だった頃は1日10時間ほどやっていましたね。といっても、午前中はフリースクール、午後は友達の家でしていたので、1人でやることはほとんどなく、引きこもりになったり、昼夜が逆転したりことはありませんでした。

「ゲムトレ」でも、ゲームのトレーニングは基本的に朝やるようにしています。昼夜が逆転している子も、ポジティブな気持ちで起きられるようにと心がけています。

――ゲームとうまくつき合うために、保護者は子どもにどのように助言すればいいでしょうか。

僕は自由にやらせればいいという考えです。中学時代に囲碁の全国大会に出た経験があります。囲碁や将棋に夢中になるのはいいのに、なぜゲームはダメなのでしょうか。囲碁も「ゲーム」ですよね。そこから何を学ぶかが大事ではないでしょうか。ゲームの実況を見るだけではなく、自分でやってみる。うまくできなかったら見直して、また挑戦する。このプロセスは勉強と共通しています。

ただし、ゲームは営利企業が作っているので、注意すべき点もあります。たとえば課金。子どもが自由に課金できる設定になっていないかどうかは、事前に確認しておきましょう。

課金には「良い課金」と「悪い課金」があると思っています。お金を払わないと強くならないようなゲームは課金がエスカレートしがちなので、「悪い課金」です。その点、フォートナイトのように課金してもキャラクターの見た目が変わるだけで、強さには関係ないゲームもあります。フォートナイトは基本的には無料で遊べるゲームです。ゲームソフトを買えば4千~5千円程度かかることを考えれば、お小遣いの範囲内で、かっこいい見た目にするために多少の課金をすることは問題ないのではないでしょうか。

――親としては、子どもに自由にやらせるとゲーム依存になるのではないかと心配です。

WHO(世界保健機関)の定義からいっても、ゲームをたくさんやっているだけでは依存とは言えません。ただ、1人で会話もなくやっていると依存になりやすいとは思います。

依存になりやすいのは、満たされていない状態にある人です。そうした人は、大人であれば、たばこやアルコールにいくかもしれません。ゲームに依存している子どもから、いきなりゲームを取り上げると、リストカットなどもっと危険な状態になる恐れもあるので注意が必要です。

こうした子どもは、このままではいけないと自身でも分かっているはずです。取り上げるのではなく、ゲームの大会に出ることを勧めてみてはどうでしょう。緊張感がある中で勝てばうれしいし、負けると悔しい。単なる遊びではなく、自分で考え、練習することで、ゲームとの向き合い方が変わります。

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