「探究」で高大接続

京大院生・田中孝平さん「探究を学んだ高校生は大学で生かせているか」

2021.07.21

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中村 正史
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高大接続改革についての10年来の議論は、結局、大学入学共通テストを導入することで決着しました。しかし、高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。高校時代に探究の学びを経験した学生を対象に、探究で身につけた能力は大学でも生かされているかを調査・研究している京都大学大学院生の田中孝平さんに聞きました。(写真は、企業と連携して海外の社会課題の解決を話し合う高校生たち)

田中孝平

話を聞いた人

田中孝平さん

京都大学大学院教育学研究科 博士後期課程在籍

(たなか・こうへい)同志社大学社会学部卒、京都大学大学院教育学研究科に進む。日本学術振興会特別研究員(DC)

経験者が得意なレポート作成とプレゼン

――6月発行の大学教育学会誌で「高大接続における学習の連続性と非連続性の検討――高校で探究学習を経験した学生の語りの分析を通して」という論文を発表しています。探究と高大接続との関係についての調査研究はほとんどありませんが、なぜこのテーマに取り組もうと思ったのですか。

私は滋賀県の県立高校の出身で、高校時代に受験勉強をかなりしましたが、探究学習はありませんでした。大学に入って自分が何をしたいのか、何のテーマで勉強すればいいのか、わからなかった経験があります。同志社大学で山田礼子教授の授業で高大接続を学び、こういうアプローチなら高校生を救っていけると思ったのが最初のきっかけです。

山田教授のゼミに入り、高校と大学の学びをどう接続するかをテーマに卒論を書きました。高校時代に主体的な学習行動があれば、大学でも主体的に学ぶことを明らかにし、このテーマを深めたいと、京都大学大学院教育学研究科に進んで松下佳代教授の指導のもとで研究を続けています。

――どのような調査をしたのですか。

高校時代に探究学習を経験した学生にインタビューし、高校時代の探究学習で身につけた資質・能力が、大学での学習につながっているかを明らかにしようと思いました。ある総合型研究大学の6人の学生を対象に、2019年8月に1回目のインタビューを行い、1年後の20年8月から9月にかけて2回目の追跡的なインタビューを行いました。学生は2年と3年で、1年後の調査時には1学年上がっています。

この調査とは別に、1年生3人を対象にした調査も行っており、6月5日の大学教育学会で発表しました。

――高校での探究学習の経験は大学で生かされているのですか。

高校の探究学習で身につけたレポートなどを書くライティングスキルと、プレゼンテーションのスキルは大学でも生かされています。この二つのアカデミックスキルは、高校と大学の連続性の部分で重要です。

探究学習の未経験者は、パワーポイントやエクセルを使ったことがない学生もいるのに対し、探究学習の経験者は高校時代にやったことの繰り返しなので、自信を持ってスムーズに取り組めています。グループ内で話し合う際も、未経験者は進め方や流れがわからないため、経験者がリーダーシップを発揮しやすいです。

一方、非連続性の部分もあります。特に学問分野の性格から、理工系に多く見られます。スーパーサイエンスハイスクール(SSH)やスーパーグローバルハイスクール(SGH)の高校に在籍していた学生は、高校時代にいろんな機関の設備を借りて実験したり、問いを立てて調査、考察し、成果を発表したりすることをしていますが、大学の1、2年ではそういう学びはあまりありません。理工系の学問は、知識内容の体系化の度合いが高く、教科書中心の積み上げ式の授業が中心になります。高校時代に一から問いを立てて考察してきた経験者は、大学の授業は面白くないと感じてしまいます。

話し合いながら学ぶ高校生
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