学習と健康・成長

目先の勉強時間よりも大事なことが… 中学受験、保護者がすべき子どもの自律神経ケア

2021.07.30

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夏野 かおる
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コロナ禍で全国的な休校になった時期、「朝スッキリ起きられない」「集中力が続かない」などの症状を訴えるお子さんはいませんでしたか? そうした症状の原因の1つに、「自律神経の乱れ」が考えられます。内臓の働きを調節したり、幸せや愛情を感じる脳のホルモンの分泌に関わったりしている自律神経。中学受験においても大切なケアの1つとして、自律神経をうまく整える方法を専門家にうかがいます。

中学受験はリスク因子、朝型生活にシフトを

——どのようなことが、子どもの自律神経が弱るきっかけになるのでしょうか。

よく挙げられるのはメンタルストレスや不規則な食事、睡眠不足です。共通して言えるのは、“動物らしい生活”に反するのはよくない、ということ。その理由について、脳の仕組みから説明しましょう。

人間の脳には、生きるための土台となる動物的な脳(からだの脳)、人間らしい文化を司る脳(おりこうさん脳)、感情のコントロールや論理的思考力につながる脳(こころの脳)があります。このうち自律神経の基地となるのは、「からだの脳」。0〜5歳と、もっとも早い段階で発達する脳です。

「からだの脳」がしっかりと働いていれば、自律神経の働きも整い、自然なリズムで生活できます。ところが、人間には「おりこうさん脳」があり、「からだの脳」より優先して働くことができる。「からだの脳」が「もう休みたい」と訴えても、ある程度無視して活動できてしまうのです。

しかし、当然ながら、永遠にそのような生活を続けることはできません。「からだの脳」を無視しても、ある程度まではなんとか頑張ってくれます。けれども、どこかのタイミングで必ず糸が切れてしまう。そうなったが最後、一気に生活が崩壊してしまいます。

夜更かし気味になり、大きなプレッシャーを伴う点では、中学受験もリスク要因のひとつ。子どもの将来を考えるがあまり、無理な生活をさせていると、さまざまな支障を来す危険性もあることを知っていただきたいです。

——無理な生活を続けていると、具体的にどのようなことが起こるのでしょうか?

実際によくあるのは、受験によるプレッシャーやストレスから髪の毛を抜き出したり、食べ物を嘔吐したりすること。たとえ志望校に受かったとしても心身ともにボロボロな状態なら、本末転倒と言わざるを得ません。

ですから、中学受験をさせるのであれば、忙しい生活の中でも、可能な限り自律神経をケアしてあげる必要があるのです。とくに、睡眠時間を削るのはまったくもってナンセンス。学習の内容は、眠っている間に定着するものですから、眠い目をこすって深夜までやらせても、知識は垂れ流しになる一方です。

小学生の理想的な睡眠時間は10時間。たとえ追い込みの時期でも、最低9時間は確保したいところです。「夜遅くまで勉強するのが美徳」といった、間違った常識に囚われているようではだめ。本気で子どもの将来を考えるなら、学習塾の方針にただ従うのではなく、勇気を持って、家庭の生活方針を整えてほしいと思います。

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出典:『子どもにいいこと大全』

——多くの学習塾ではたくさん宿題が出されるため、なかなか早く寝かせられないと聞きますが……。

繰り返しになりますが、夜遅くに取り組んでも、良いことは何もないんです。人間の体は、朝がもっとも活動的で、夜になるにつれ休息モードに入るようにできています。ですから、勉強は朝やるのが一番。

あるご家庭では、帰宅後の宿題タイムをやめ、早起きして取り組ませる生活にしました。すると、これまで1時間半かかっていた宿題が、たった30分で終わるようになったそうです。こっちのほうが、よほど効率が良いと思いませんか?

食事の量も同じで、朝食がもっとも重く、夕食は早めの時間に、軽いものを食べるのがおすすめ。「頑張っているから」と夜食を食べさせてしまうと、消化し切れない食べ物が残ったまま眠ることになり、朝になっても食欲が出ません。中には、「うちの子、朝は食べたがらないんです」とおっしゃる方もいますが、おそらく夕食を食べさせすぎているのだと思います。

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9歳の子どもの理想的なスケジュール例(出典:『子どもにいいこと大全』)

目先の勉強時間より、自律神経ケアを優先して

——多忙になりがちな中学受験生の保護者としては、どのような姿勢で子どもの自律神経をケアするとよいですか。

小学生までは、自律神経のケアは親の務めだと思います。中高生くらいだと、自分で体のリズムをつかめるようになり、「○時間くらい寝ないと調子が出ないぞ」と分かってきます。一方、小学生だとその加減がわからず、気付いた頃にはすっかり調子を崩してしまっていることも少なくありません。

受験は、受かるか、落ちるかの2択しかありません。どんな子にも不合格の可能性はあるのだから、たとえ落ちても、「よい経験になったね」と笑えるようになっておくのが大事。そのためには、目先の勉強時間よりも、原始的な生き延びる力、つまりは自律神経のケアを優先させてほしいと思います。

自律神経が整えば、メンタルが安定し、親子ともに笑顔が増えます。「子どもの幸せ」という本来の目的を見失わず、心身ともに健康な状態でチャレンジしてください。

(編集:野阪拓海/ノオト)

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