「探究」で高大接続

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

2021.08.03

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中村 正史
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高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。日本の大学生の勉強時間は海外の大学に比べて極めて少ないことも知られています。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。大学生の学習時間に影響する要因や、入試方式と大学での学びとの関連を調査したベネッセ教育総合研究所主席研究員で東京大学客員教授の木村治生さんに聞きました。(写真は、グループで話し合いながら教科を学ぶ高校生)

木村治生

話を聞いた人

木村治生さん

ベネッセ教育総合研究所主席研究員、東京大学客員教授

(きむら・はるお)2000年、ベネッセコーポレーション入社。子ども(乳幼児~大学生)、保護者、教員を対象とした意識や実態の調査研究、学習のあり方についての研究などを担当。文部科学省や経済産業省、総務省から委託を受けた調査研究にも数多く携わる。専門は社会調査、教育社会学。

大学生の学習時間は小学生以下

――高大接続の大きな問題は、日本の大学生が勉強しないことだと思います。変化はありますか。

ベネッセ教育総合研究所が行っている「大学生の学習・生活実態調査」の2016年のデータ(対象4948人)では、大学生の学習時間は、授業の予習復習、自主的な学習を合わせて1日あたり平均40~45分です。別の調査で小学生から高校生の学習時間(宿題、家庭学習、学習塾の合計)を調べていますが、受験を控えた中3と高3を除いた小6から高2で平均1時間30分~1時間45分、中3は2時間14分、高3は3時間6分です。小4でも1時間14分なので、大学生の学習時間は小学生より少ないです。

学習時間は大学の入学難易度によって多少の差はありますが、偏差値65以上の難関大学の学生でも50分前後なので、偏差値による違いは大きくありません。学習時間の短さは、多くの大学に共通する課題です。

調査は08年から4年ごとに行っていますが(20年は新型コロナウイルスのために中止)、大学生の学習時間にあまり変化はありません。一方で、大学の授業は対話型を取り入れたアクティブラーニングが増えています。大学の学びには変化がありますが、学習時間は変わっていません。

――高校時代の学び方によって、大学での学習時間に違いがありますか。

高校時代の学習の様子を、「真面目に授業に出席した」「授業の予習や復習をした」「グループワークやグループディスカッションに積極的に参加した」「計画を立てて勉強した」「興味を持ったことについて自主的に学習した」の五つに分けて、大学での学習時間を調べました。高校時代に「真面目に授業に出席」していても、大学での学習時間は長くなく、「授業の予習や復習」「グループワークやグループディスカッション」「計画を立てて勉強」「自主的に学習」していた人ほど、大学での学習時間が長くなっています。

高校時代の学びのスタイルは、大学に進んでも継続されています。高校で主体的、自主的に学んだ人は、大学でも主体的に学び、高校でアクティブラーニングを積極的に経験した人は、大学でも積極的に参加しています。

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

――大学の授業方法によって、学生の学習時間に違いはありますか。

大学での授業方法を、「グループワークなどの協同作業をする」「教員と双方向のやりとりがある」「学期末以外にもレポート・テストが課される」「教室外で体験的な活動や実習を行う」「学んでいる内容と将来のかかわりについて考えられる」の五つに分けて、学生の学習時間を調べました。「レポート・テストが課される」授業は学習行動を促すことにはつながっておらず、「グループワーク」「教員と双方向のやりとり」「体験的な活動や実習」「将来のかかわりについて考えられる」授業を経験している学生の学習時間が長くなっています。

――大学の授業でアクティブラーニングが増えているのなら、学習時間も増えるのではないですか。

アクティブラーニングは学生が主体的でなければ、身につきません。大学の授業はアクティブラーニングが増えていますが、2000年代前半から学生の意識が変わっており、学習や生活に関して自力で何とかするのではなく、保護者や先生を頼ろうとする受動的な傾向があります。学生の主体性をどう引き出せるかが大事で、高校時代にそれができれば、大学でも主体的に学ぶと思います。

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

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