「探究」で高大接続

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

2021.08.03

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中村 正史
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高大接続の一番の問題点は、高校までの学びが、大学での学びにつながっていないことです。日本の大学生の勉強時間は海外の大学に比べて極めて少ないことも知られています。そもそも高校と大学は何を、どのように接続すべきなのでしょうか。大学生の学習時間に影響する要因や、入試方式と大学での学びとの関連を調査したベネッセ教育総合研究所主席研究員で東京大学客員教授の木村治生さんに聞きました。(写真は、グループで話し合いながら教科を学ぶ高校生)

高校時代の探究が大学でも影響

――この調査では、大学に入った入試方式を一般入試(一般選抜)、推薦入試(学校推薦型選抜)、AO入試(総合型選抜)に分け、入学難易度ごとに、高校時代の学びと入試方式との関連、入試方式と大学での学びの関連を分析しているのが興味深いです。

①推薦入試やAO入試で入学した学生は高校時代に主体的で多様な学びを経験しているか、②彼らは大学入学後に主体的で多様な学びを実践しているか、という二つの関連について分析しました。

①は入学者選抜の違いと高校時代の学習の状況(学習時間、探究的な学び、多様な学び)との関連を分析し、推薦入試やAO入試は、大学での主体的で多様な学びに適した学生を選抜できているかを検証しました。

高校時代の学習時間は、一般入試で入った学生が推薦入試、AO入試に比べて長く、難易度別に分けても高群と低群で同じ傾向があります。

探究的な学びは、「課題解決の経験」「対話的な学び」を抽出しました。難易度が高い大学のAO入試では、課題解決の経験や対話的な学びをしてきた高校生を選抜できていますが、難易度が低い大学のAO入試では、そういう経験や学びをしていない人を入学させています。

ボランティアや学級委員・生徒会などの「多様な経験」は、AO入試、推薦入試、一般入試の順に多く、その傾向は難易度が高い大学で顕著です。

推薦入試やAO入試は、一般入試とは異なる観点を評価する選抜方法のはずですが、難易度が低い大学では選抜の効果が出ていません。

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

――二つ目の大学での学びとの関連はどうですか。

授業に対する取り組みに関する項目を「主体的な学び」「真面目さ」「協働的な学び」に分けて分析しました。「主体的な学び」は、「授業で興味を持ったことについて自主的に学習する」「計画を立てて学習する」など、「真面目さ」は「宿題や課題はきちんとやる」「履修した科目は途中で投げ出さない」など、「協働的な学び」は「グループワークやディスカッションでは異なる意見や立場に配慮する」「自分の意見を言う」といった項目です。

その結果、いずれも同じ傾向が読み取れました。つまり一般入試と推薦入試については入学難易度による違いは小さく、AO入試だけにその差が見られ、難易度が高い大学でプラスの効果が見られます。偏差値の高い大学にAO入試で入学した学生は、主体的、協働的に学んでおり、課題をこなそうとする真面目さも持っていると言えます。

ベネッセ・木村治生さん「高校での学び方が大学での学習時間を左右」

――高校までに主体的な学びを経験した学生は大学でも主体的な学びをするといえるのでしょうか。

上記の授業に対する取り組みのうち、「主体的な学び」について、高校時代の学びの影響、入学者選抜の効果を分析し、どの要因が関連しているかを調べました。その結果、高校時代の学習時間、課題解決や対話的な学びのような探究活動、ボランティアなどの多様な経験は、大学での主体的な学びにプラスの効果を持っています。

一方で入学者選抜の効果については、学年や入学難易度の違いも考慮し、推薦入試やAO入試の効果を検証しましたが、入学者選抜が大学入学後の学びに強い効果を持つとはいえません。ただ、AO入試は難易度が高い大学でプラスの効果が見られます。

総括すれば、難易度の差をコントロールしても、高校時代の学びと大学の学びの関連が圧倒的に強いです。他の調査でも、高校と大学の学びの連続性は強いことが示されています。

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