海外大進学という選択

国際バカロレア認定校の学びとは? 筑波大附属坂戸高の授業をのぞいてみた

2021.08.18

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市川 理香
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「探究」が基本、向き不向きも

――IBの学び方とは、どのようなものでしょうか。

IBの学習の特徴は「探究型学習」です。先生や生徒による講義、対話型学習、グループワークによる協働学習、プレゼンテーション、問題解決・探究型学習を行っています。例えばTOKでは知識を求めるのではなく、「なぜ私たちは知識を求めるのか」「知識を持つこと、あるいは持たないことはどのような意味があるのか」「知ることができないことは存在するのか」というようなことを考えます。このようなどこの国でも、どんな言語でも即答できないトピックについて、一生懸命考えてディスカッションをし、自分の意見を深めていくということがIBの学びの特徴です。

生徒と話をしていると、自分が大学や大学院で研究していた頃の感覚に近いと思います。大学の研究室で、幅広くいろいろなことを知っている者同士がディスカッションしているような場面が高校に降りてきた、そんな感じです。

まだまだ日本に IBは浸透していません。また「IB=英語」「IB=国際」という偏ったイメージで捉えられているので、学校説明会でも外国語コースですか、海外大学に行けますかという話になりがちなのは残念です。どのような教育かを知ってもらうには体験授業に参加してもらうのが一番なので、自分がどう思うのかを問われる体験、英語だとWhat do you think?と聞かれるようなアクティビティーを入れています。こういう体験をして面白いと思ってくれる中学生は一定数いますが、日本の中学校ではそうした授業は一般的とはいえないこと、英語で行うDPの授業もあることから、これまではIBプログラムに関心の高い都内からの通学生や海外帰国生が多いのが現状です。

――初めての卒業生を送り出して感じたことはありますか。

IB教育について、エリート教育だとか英語の教育だとかいわれていますが、そうではないということが実感としてわかったという認識です。確かに英語による授業もありますし、課題が多くて大変ですが、日本でよく見られるやり方とは違うだけで、整理していけば、生徒はきちんとできると思っています。

整理は、まず保護者に、IBDPは日本のやり方と全く違うということをきちんと理解していただくことから始まります。学校説明会でも最終的に大学入試に合格しさえすればいいというような感覚で、IBDPの最終試験を通ればいいのですよねと誤解されている方が多いので、IBDPが即、海外大学進学や英語で大学受験ができるプログラムではなく、向き不向きがあるカリキュラムで、万人向けではありませんと伝えます。そして、授業に加え多くの課題に取り組む必要があるので、DPを取得するためには、三つのコア科目、TOK、CAS(課外活動)、EE(課題論文)とDP6科目、全てをバランスよく学習することを意識づけるようにしています。

――バランスよく、という点を詳しく教えてください。

IBが求める「バランスよく学習すること」は、「IBの学習者像」にもうたわれている、世界のIB校共通の基本理念です。英語が得意です、数学が苦手です、では得意な英語を伸ばしましょう――ではなく、得意科目を学ぶ時間はほどほどにして、その分を苦手科目に充ててまんべんなく学び、「バランスのとれた人」を目指すのがIBの理念なので、その点を保護者も本人も理解しておくことが肝要です。飛び抜けた何かを伸ばすためには、バランスよく学ぶことが大切ですし、苦手なことでも取り組む必要があると伝えるようにしています。

各科目の満点である「7点」にしても、非常に高いレベルを求められます。課題論文だけでなく日常的にたいへん多くのリポートを書きますが、APA(論文スタイルの一つ)や各種学会の論文で使用するアカデミックスキルは必須です。評価は世界共通のルーブリック(評価基準)が決まっており、自分がどこまでできているのかを知ることで前に進むことができます。保護者にもルーブリックを示して理解を求めます。生徒には点数でわかる勉強法とは全く違うのだと話しています。

提出する課題は、内容はもちろん、全ての教科で課されるので、最終評価に結びつくことを見通した上で、自分自身でタイムマネジメントをしなければならない。これはなかなか大変だと思います。内容を高度にしようと思えばいくらでもできますし、調べれば調べるほどキリがありませんが、締め切りは守らなくてはなりません。社会人と同じで、求められるクオリティーと締め切りとを考えてマネジメントする必要があるのです。計画的に課題を出して得る内部評価と、最終試験との合計でDP取得が審査されるのですから。評価が厳密であることもIBのプログラムの特徴といえます。

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