海外大進学という選択

灘中高→東大(半年)→米ウェズリアン大 石田智識さん「『とりあえず』を問い直す」

2021.08.13

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山下 知子
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米国のウェズリアン大で学ぶ石田智識さん。東大を半年でやめ、当初の目標であった大学で学ぶために渡米しました。「中1の僕では考えられない進路」と話します。転機は何だったのでしょうか。また、自身の中高時代や日米の大学入試を通じ、教育にも関心を持っているといいます。話を聞きました。(写真は、フリスビーサークルのパーティーで同級生と。中央右が石田さん=石田智識さん提供)

石田智識

話を聞いた人

石田智識さん

米ウェズリアン大学2年

(いしだ・ともし)1999年、大阪市生まれ。市立小から灘中高に進み、2018年、東大理科Ⅱ類へ進学。その年の9月に東大をやめ、米コネチカット州にあるリベラルアーツ系の難関、ウェズリアン大へ入学。20年9月から1年休学し、卒業後を見据えて長期インターン中。21年9月に復学予定。

ニュージーランド研修で一変

中1の僕には考えられない進路です。まさか大学から海外に出ているなんて。

転機は中2。住んでいた大阪市の区の事業で3週間、ニュージーランドのオークランドへ語学研修に行ったことです。自分から行きたいと言ったわけでなく、母が勧めてくれました。でも当時は「めんどくさい」でしたね。両親と祖父母が僕を説得し、いまいち気が乗らないまま飛行機に乗りました。

それで人生が変わりました。見るもの、聞くもの、全てが新鮮。いろいろな人に出会って未知の世界を知るのは楽しくて、「挑戦するっていいな」と思えたんです。

それまでの僕は、クラスメートとサッカー部の人としか関わらない狭い世界で生きていました。狭いとも思わなかったし、現状が心地よかったんです。変えようとか思ったことはなく、淡々と過ごしていましたね。それがニュージーランドから戻って、挑戦してみたい気持ちが沸々と生まれました。英語を使って活動するESS(English Speaking Society)やマジックなどのクラブ活動に入り、生徒会もやりました。そんな変化に、僕自身が一番びっくりしました。

英語に関しては、中1のbe動詞がスタートです。それまで習ったことはありません。灘中は、中2の夏には中学で習う範囲が終わっているのですが、それだけではしゃべれないことはニュージーランドで経験済みです。通学に1時間半かかったので、電車に乗っている時間を活用しました。様々な分野の専門家によるプレゼンテーションをスマホで無料で視聴できる動画配信サービス「TED Talks」を見たり、映画やドラマを見たり。映画やドラマは好きだったので、息抜きでもありました。

マサチューセッツ工科大の語学学校でできたスペイン人の友人と石田さん(左)=石田智識さん提供
マサチューセッツ工科大の語学学校でできたスペイン人の友人と石田さん(左)=石田智識さん提供

高1で同級生たちは学校行事の一環で英国に行ったのですが、僕は個人で申し込んだ米マサチューセッツ工科大がやっている留学生向けのプログラムに参加しました。いろいろと悔しい思いもして、成長できたと思っています。またその頃、母が新聞で見つけた、HLAB主催のサマースクールに参加しました。海外大の学生もいて、自分が何をしたいのかを深く考えましたし、海外大という選択肢があるということを知り、「大学から海外に行きたい」と思い始めました。米国の入試は「何したい?」が問われるもの。その過程を含めて、経験してみたいと思ったんです。

というのも、自分自身が何をやりたいのか分からないままでした。「勉強していれば、何となくレールはあるし」とも思っていました。灘に入学すると、親の期待や周囲の影響もあって、「とりあえず東大」「とりあえず医学部」という同級生が多かったです。中1からそのための塾に通う生徒も多かったですし。僕の両親も医学部に進学してほしかったようで、僕も「東大か医学部かな」と漫然と思っていました。

マサチューセッツ工科大にあるパブリックアート「Alchemist」(錬金術師)の前で写真におさまる石田さん=石田智識さん提供
マサチューセッツ工科大にあるパブリックアート「Alchemist」(錬金術師)の前で写真におさまる石田さん=石田智識さん提供
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