海外大進学という選択

「東大以上」にこだわる親も教師も、価値観のアップデートを HLABの高田修太さん

2021.08.17

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山下 知子
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米国の学生寮をひとつのモデルに、高校生と大学生らが寝泊まりしながら交流するサマースクールや寮を運営する教育ベンチャー「HLAB」。理事をつとめる高田修太さんは、海外大学進学について、大人の価値観のアップデートと奨学金制度の拡充を訴えています。高田さんに話を聞きました。(写真は、HLABが主催する、コロナ禍前のサマースクールの様子=HLAB提供)

高田修太

話を聞いた人

高田修太さん

一般社団法人HLAB理事/共同創設者、マジシャン

(たかだ・しゅうた)1989年、千葉県出身。開成高から東大理Ⅱへ進み、工学部在学中の2011年、米イリノイ大へ留学。東大大学院工学系研究科修士課程修了後、ボストンコンサルティンググループに勤務。国籍や年齢、専門を超えて学ぶサマースクールや寮事業などを展開する一般社団法人HLABの理事を2017年からつとめる。マジシャンでもある。

東大も「蹴られる」存在に

――今春、海外大から合格通知を受け取った高校生の話が、ネット上で話題を集めました。

今春は、地方の高校から海外の難関大に進学した事例があり、盛り上がりましたね。進学者の絶対数も増えていますが、発信力のある進学者がいたことが大きかったと思います。ただ、今春の増え方がそこまで大きいかというと、決してそうではありません。しかし、この流れは今後も続きますし、加速すると思っています。海外大進学のノウハウも積み上がってきていますし、学校によっては必要なサポートも受けられるようになってきています。

東大に進学しながら半年でやめ、合格をもらった海外大に9月から入学するケースもこの10年、毎年のようにあります。大学も国際競争力が問われる時代。その中にあっては、東大も「蹴られる」存在です。東大もそのあたりは織り込み済みだと思いますが。

ハーバード大
ハーバード大

――増えている背景には何があるのでしょう?

情報にアクセスしやすくなった、体験談を聞きやすくなった、ということもありますが、国内の「名門」と言われる高校からの海外進学が増えていることが理由でしょう。

2014年、開成高校から米ハーバード大に進学した生徒が出ました。開成は学年を超えて取り組む行事が多く、先輩・後輩のつながりが強いので、「海外大という進路があるんだ」「俺も行けるかも」と思った生徒がいたはず。その後はコンスタントに海外大進学者を出すようになりました。その前年から、海外大進学の説明会が同校で始まったことも大きいと思います。僕は当時、説明会のお手伝いをしたのですが、参加者は高校生だけでした。それが数年後に2回目を開催したら、親の参加がどんと増えていました。子どもよりも前に親が動いている印象です。変わったと思いましたね。そうした開成の動きはニュースにもなったので、開成に限らず、高校卒業後の選択肢の一つとして少しずつ考えられ始めたのだと感じています。

――「決して海外大進学論者ではない」とSNSで書いています。その心は?

大事なのは「どの大学に行きたいのか」です。「この分野に力を入れているから○○大」「カリキュラムが面白そうだから△△大」で十分です。国内の大学と海外の大学とが別々に存在しているわけではありません。どっちが偉いか、というものでもありません。同列に並べて比較すればいいのでは? もしくは、選択肢を広げると捉えればいいと思います。選択肢は当然、たくさんあった方がいいですから。

悩んだ結果、国内の大学に行くことは素晴らしいことだと思います。考え、悩んだことで、やりたいことはより明確になっているはずです。意志を持って大学を選び、学ぶことが何よりも大事。ですから、何が何でも海外大に行くべきだ、なんていう気持ちは全くありません。

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