学習と健康・成長

自然との触れ合いが非認知能力を伸ばす? 植物を育てることがもたらす効果とは

2021.09.06

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有馬 ゆえ
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スマートフォンやタブレットなどが普及し、すっかりデジタル慣れしている子どもたち。一方で、コロナ禍の外出自粛もあり、自然との触れ合いは減っているのではないでしょうか。「自然との関わりは子どもの非認知能力を伸ばします。学校や家庭で植物を育てる体験は、その第一歩になるでしょう」。そう話すのは、小学校教員の経験を持つ、愛知教育大学学長の野田敦敬さん。子どもが植物栽培を通して身につける力と、家庭での植物栽培の始め方について、野田さんに聞きました。

Atsunori_Noda

話を聞いた人

野田 敦敬さん

愛知教育大学学長

(のだ・あつのりさん)1983年、愛知教育大学大学院卒業後、名古屋市内の小学校で14間勤務。1997年より、愛知教育大学教育学部で幼児の自然教育、小学校低学年の生活科、総合的学習について研究している。2020年より現職。日本生活科・総合的学習教育学会(前会長)、日本理科教育学会、日本教科教育学会に所属。

子どもの心を育む身近な教材

――子どもは植物と触れ合うことで、どのように成長するのでしょうか?

植物は身近な存在でありながら、子どもの心を育むうえで効果的な教材です。毎日の世話を通して、成長を間近で見られるため、生命の不思議さに触れ、自分の手で何かを育てる喜びを得ることができます。

一方で、植物栽培は決して思い通りには進みませんから、忍耐強く見守り、予想外の事態にどう対処するか考える経験にもなります。失敗を体験することは、物事に100%成功することはないと知るチャンスにもなりますね。

植物を介したコミュニケーションも生まれるでしょう。例えば、子どもが植物を育てるときには、周囲の大人の協力が必要です。私が小学3年生のときには、学校で育てたヘチマの種を家でも育てる課題がありました。肥料やりや棚作りなど、父や祖父母に手伝ってもらったことを印象深く覚えています。

――日常生活では叶わないコミュニケーションができそうですね。

植物が土に根差し、水を吸い、光を受けて成長し、虫を介して受粉し、実がつく……。こうした成長の過程を間近で体験できるのもいいところ。テレビや本を通してではなく実体験から学ぶことで、自然を自分と地続きのものとして想像し、その恩恵に思いを馳せる力が身につきます。

また、植物栽培は五感を磨くのにも役立ちます。学校教育は座学が中心なので、視覚と聴覚に偏りがち。土の感触や匂い、花の香り、実の味わいなどに触れる経験は、嗅覚や味覚、触覚といった感覚もフォローできるのです。

とくに嗅覚は、人間が生命を維持するためには重要な感覚。「火の燃える匂いがするから逃げる」といった判断ができるように、日頃から感覚を磨く必要があります。

今の子どもたちは、匂いに関する語彙をあまり持っていないように感じます。栽培活動を通して、「いい匂い」と「臭い」以外の「○○みたいな匂い」といったボキャブラリーを育ててほしいなと思います。

――フラワーセラピーのような癒やし効果はあるのでしょうか。

そうですね。小学校低学年の生活科には、「朝顔の声を聞こう」という授業例があります。子どもが朝顔の花や葉の絵などをつけたキャップをかぶり、朝顔になりきって花と対話する授業です。これはセラピー的ですね。子どもが花を介して自己と対話し、それを言語化しているわけですから。そう考えると、植物と向き合う行為は、内面との対話のきっかけになるのかもしれません。

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