読書と作文が好きになる学び

読書感想文も怖くない? 「読書応援アプリ」で起業の東大生を育てた筑駒の授業

2021.08.23

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石臥 薫子
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小さい頃から読み聞かせをしたり、図書館に連れて行ったりしたのに、いまや子どもはスマホに夢中で、夏休みの読書感想文が憂鬱――。そんなお悩みを解決しようと、筑波大学附属駒場中・高卒の現役東大生3人が立ち上げたスタートアップが「Yondemy」です。同社の「ヨンデミーオンライン」はアプリを通じてAI(人工知能)司書が子どもの好みや読む力を分析し、思わずハマってしまう本を薦めてくれるサービス。続けるうちに、より幅広いジャンル、より難しい本を読む力がついてくるといいます。同社代表取締役の笹沼颯太さんに話を聞きました。(写真は、Yondemyを起業した東大経済学部4年の笹沼颯太さん=本人提供)

笹沼颯太

話を聞いた人

笹沼颯太さん

Yondemy 代表取締役・東京大学経済学部4年

(ささぬま・そうた)筑波大学附属駒場中・高(筑駒)卒。現在、東京大学経済学部4年生。筑駒時代に、ワークショップ形式の読書・作文授業を先駆的に行っていた澤田英輔氏の指導を受け、その経験をもとに2020年4月、中学以来の友人とYondemyを起業。同年12月に「ヨンデミーオンライン」のサービス提供を開始。

児童書1000冊以上の独自データ

昨年、Yondemyを創業した笹沼颯太さんは東京大学経済学部の4年生。アルバイトで家庭教師をする際、生徒の親に必ず尋ねられる質問がありました。「先生は子どもの頃、どんな本を読んでいましたか?」

「これは『東大生あるある』でして、Yondemyの他のメンバーも同じ経験をしていました。多くの親御さんは、我が子に読書習慣をつけさせたいと願っているのに、なかなかうまくいかずに悩んでいる。特に中学受験で国語が苦手なお子さんを持つ親御さんからは、『塾の先生からは『本を読みなさい』と言われたけれども、子どもが本に興味を持ってくれない。感想を聞いても面白かったとしか言わない』といった声を聞いていました。筑駒から東大に進んだ友だちとそういう話をする中で、読書をサポートするサービスの必要性を感じました」

子どもに本を選んであげたくても、世の中には膨大な本がありますから、親としてはついつい「東大生が子どもの頃に読んだ本」や、学校や図書館、塾が提示する「推薦図書」や「課題図書」を参考にしたくなります。でも笹沼さんによると、それらは「大人が読んでほしいという願望のリスト」であって、子どもが読みたい本との間にはギャップがあるといいます。

「たとえば図書館が出しているブックリストが誰に向けたものなのかといえば、それは図書館に通ってくるような読書に慣れた子ども向けなのです。読書の経験が浅い子どもにとっては、そういう本は難しすぎて挫折してしまいます。同じ学年、年齢の子だから同じ本や同じ難しさの本が読めるわけではありません。また、往々にして親や先生は名作や古典を薦めるのですが、重要なのは子どもに手渡すタイミングです。どんなにいい本でも、その子に合ったタイミングでなければ本のメッセージを受け取ることもできないのです」

読書が苦手な子どもは、まだ自分にぴったり合った本に出合えていない、あるいは読むコツを知らないだけだと笹沼さんは言います。ヨンデミーオンラインの対象は5歳から15歳まで。事前のアンケートで把握した読書傾向に基づいてお薦めの本を提示し、子どもから感想を聞きます。そのフィードバックを参考に次回のお薦め本を選定するという繰り返しでチョイスの精度を上げていく仕組みです。月額利用料金は2980円。電子書籍サービスではないため、読む本は各自で図書館や書店から入手する必要があります。

「『つまらなかった』『長過ぎた』という感想も、その子にぴったりの本を見つけるためには重要な情報です。僕たちは全国の図書館司書さんと共同で1000冊以上の児童書の構成要素や難易度を細かく分析した独自のデータを持っています。そのデータと一人一人のお子さんの情報をAIが掛け合わせて分析し、次にお薦めする本を提案するので、実際に司書さんが本をお薦めするのにかなり近い形を実現できていると思います」

でも親にとって気がかりなのは、SNSやユーチューブ、ゲームの誘惑。2020年度の内閣府の調査によれば、小学生の1日あたりインターネット使用時間は平均146分。3時間以上使っている子どもも3割います。アプリで本当に読書習慣がつくのでしょうか。

「ユーチューブは受け身でいられるのでラクです。それに比べ本を読むのは能動的な作業ですから確かにハードルは高い。でもユーチューブでお笑いを見ているお子さんも、そこにストーリーがあるから楽しんでいるのです。ストーリーを楽しむという根っこの部分は読書も同じで、単に摂取の手段が違うだけなのです。ユーチューブで好きなものがあるなら、きっと本の中でも好きなものを見つけられる。レベルと好みがあった本に出合えば、本も楽しいとお子さんは気づくでしょう。一足飛びに『ユーチューブより本が楽しい!』とはならないでしょうが、徐々に本も手にとってくれるようになる。実際にヨンデミーのサービスを利用している方からはそういった声を聞いています」

ヨンデミーオンラインの利用者宅で。対象年齢は5~15歳だ=Yondemy提供
ヨンデミーオンラインの利用者宅で。対象年齢は5~15歳だ=Yondemy提供

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