海外大進学という選択

海外への進学、低年齢化の動き サピックス国際教育事業本部長の高宮信乃さんに聞く

2021.08.30

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山下 知子
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グローバルに人や物が行き来する時代。近年は海外大学への進学を目指すなど、国境を越えた進学が現実的な選択肢になりつつあります。中学・高校段階での留学も増えているそうです。最新の動向は? グローバルな時代に子育てで大事にしたいこととは? SAPIX YOZEMI GROUP国際教育事業本部長の高宮信乃さんに話を聞きました。(写真は、取材に応じる高宮信乃さん=2021年5月、東京都渋谷区、葉山梢撮影)

奨学金を得られれば家計負担年100万円未満も

――こうした動きの背景には何があるのでしょう?

日本の高校からダイレクトに海外大へ進学することが広まった象徴は、開成中学・高校(東京)の動きでしょう。東大合格者数40年連続1位の開成が校内に海外大進学に向けた組織を作り、2014年にはハーバード大へ進学する生徒が出ました。これは大きな波になったと思います。

低年齢化の理由は、いくつか考えられます。一つ目には、帰国生の増加があります。当然、親が帰国生のケースも増えており、自分が学んだ環境と似た環境を子どもにも与えたいと考える親は多いですね。

また、海外の大学、大学院で学んだ親の中には、現地でボーディングスクール出身者の持つネットワークに圧倒された人は多いようです。多感な時期に寝食を共にして過ごすのですから、その濃密な人間関係は一生もの。「大学からでは遅い」と、ボーディングスクールを考える親も多い印象です。

世界の時価総額ランキングをみると、平成が始まった時はトップ10に日本の会社がいくつも入っていたのに、いまはゼロ。その状況に危機感を持ち、子どもには世界に出られる語学力と行動力をつけさせ、将来の選択肢を広げたいという声もよく聞きます。

また、日本の教育に物足りなさを感じる親も増えている印象です。特に子どもの小学校受験を経験した層で、「これでクリエーティブな人間になれるのか?」と思う人が一定数おり、小中高校段階で海外に送り出そうとしています。

――米国の私立大はもちろん、ボーディングスクールの費用もとても高いと聞きます。

高いです。年間600万円でも足りません。ただ、ボーディングスクール進学に、民間の財団などから奨学金が出るケースがあります。サラリーマン家庭から、米国トップクラスのジュニア・ボーディングスクールに入った男の子がいますが、奨学金を得て年間100万円もかからずに学んでいます。奨学金を受けることは、それ自体が評価され、次の評価につながります。奨学金情報は欠かせません。

ボーディングスクールでうまくいっている子は、当たり前ですが、子ども自身が「行きたい」と思っていたケース。もし親が、子を早い時期から海外で学ばせたいと思ったら、子どもが「行きたい」と思える環境を作っていく必要があります。

海外への進学、低年齢化の動き サピックス国際教育事業本部長の高宮信乃さんに聞く

――世界への関心を持たせる、高めさせるにはどうしたらいいのでしょう?

いうなれば、「種まき」でしょうか。日本社会とは違う世界があること、その良さを映画やドラマや旅行など、色々なチャンネルで伝えていくことです。

友人がハワイに旅行に行った際、子どもを現地のデイスクールに入れたそうです。海に行ってずぶぬれになった子どもが知っている単語を使って「wet、wet」と言ったそうですが、この経験が、子どもたちの「もっと自分の言いたいことを英語で表現したい」「もっと英語を学びたい」という気持ちにつながったようです。まさに「種まき」ですよね。

日本ではあまり言われませんが、私は、親は「衝動性」が大事だと思っています。とにかくまずやってみる。色々な人の話を聞いて試してみる。思いつきでいいんです、「だめもと」で、そして1回だめでも様々なことにチャレンジしてほしいです。とにかく動いて、うまく子どもも巻き込んで、大それた経験ではなく、ちょっとした経験であっても、そこで子どもに何かを与えられたらいいのではないのでしょうか。

生きていく上で、人には何か「強み」があることが大事です。だから様々な経験を子どもに積ませてほしいですね。表現活動でもスポーツでも。何がその子に合っているかは分からないので、親はとにかくやらせてみること。子どもがはまったら「御の字」でいいんです。

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