海外大進学という選択

海外への進学、低年齢化の動き サピックス国際教育事業本部長の高宮信乃さんに聞く

2021.08.30

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山下 知子
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グローバルに人や物が行き来する時代。近年は海外大学への進学を目指すなど、国境を越えた進学が現実的な選択肢になりつつあります。中学・高校段階での留学も増えているそうです。最新の動向は? グローバルな時代に子育てで大事にしたいこととは? SAPIX YOZEMI GROUP国際教育事業本部長の高宮信乃さんに話を聞きました。(写真は、取材に応じる高宮信乃さん=2021年5月、東京都渋谷区、葉山梢撮影)

インプットもアウトプットも増やして

――日本の英語教育をどうみていますか?

インプットもアウトプットもとにかく少ないですよね。お隣の韓国の英語教科書を見たことがありますが、単語量は圧倒的に韓国の方が多いですよ。とにかくインプットもアウトプットの機会も増やしていくことが欠かせません。

英語はツールです。勉強するものというよりも、生活の一部にしていくことが大事なのでは? 「Exposure(さらされること)」の機会をとにかく増やし、そして持続させてください。かしこまらなくてもよくて、カジュアルでいいんです。好きな海外ドラマを流しているだけでもいいと思います。その際、字幕をあえて英語にするのもいいですね。我が家では8歳の娘と一緒に海外ドラマを楽しんでいます。

それから英語の本を読むこと。絵本でももちろん構いません。子どもに英語力がなくても、様々なジャンルの本をまず読むこと、聞かせることです。待っていたらいつまでたってもできません。重ねていけば、context(文脈、背景)を含めて分かるようになるはずです。

これからの時代、英語なしではやっていけません。プラスしてもう一つの言語ができるぐらい、語学の力が必要になってくると思います。

高宮さんが社長をつとめ、ボーディングスクール留学をサポートするTriple Alphaには、子ども向けの様々なジャンルの英書が並ぶ=2021年5月、東京都渋谷区、葉山梢撮影
高宮さんが社長をつとめ、ボーディングスクール留学をサポートするTriple Alphaには、子ども向けの様々なジャンルの英書が並ぶ=2021年5月、東京都渋谷区、葉山梢撮影

――ご自身は米国で高校・大学生活を送りました。

外交官だった父が赴任していたパキスタン・イスラマバードに生後半年で向かったのが最初の外国経験です。以来、計7カ国で過ごしました。アフリカ・スーダンのハルツームは、1日のほとんどが停電し、蛇口をひねれば茶色の水が出る……。ゴキブリも真っ黒で大きく、「キャッ」なんて言えるような代物ではありませんでしたね。

受験が迫ってくると、海外駐在の家庭の多くは子どもの教育を考えて日本に戻ります。しかし私の両親は「今の経験は絶対に糧になるから」と言って戻りませんでした。ですから、日本で教育を受けたのは、横浜市で暮らした1年半に小学校へ通ったくらい。当時の私は親の言う「いい経験」はよく分からなかったのですが、今はかけがえのないものを得たと思っています。その第一は、様々な意見を持つ、様々な人へのリスペクトが生まれたこと。実際、周囲は自分と違うことだらけなので、「そういうものなんだ」と受け止めることからスタートせざるをえません。だからこそ偏見なく、人と接することができるようになったと思います。

――そのお立場から、日本の教育をどう見ていますか?

詰め込み教育と批判されますが、インプットなしでどう学べと? 初等中等教育レベルのインプットは当然だと思います。

日本の初等中等教育段階の基礎学習のスタイルは、しっかりとルールにのっとってやっていて秩序もあり、素晴らしいものがあると思います。平均点と得点分布をみると、日本は下に抜けている子どもが少ない。これは誇っていいことだと思います。

ただ、その良さが強調され過ぎていて、クリエーティブな学びにブレーキをかけてしまっているのが日本の教育ではないのでしょうか? 下に抜けている子どもが少ないと同時に、上に抜けている子を伸ばすことができていない。いつまでたっても大人が用意した枠の中でやらせようとしていて、年齢を重ねても緩めない。緩めないから「海外に~」となっているのだと思います。

もう一押し、二押しで、変われるとは思っています。

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