コロナ禍2年目の大学入試
9月1日出願スタート「総合型選抜」今年こそ広がる機運
2021.08.31

総合型選抜(旧AO入試)の出願が9月1日から始まり、2022年度大学入試がスタートします。昨年は新型コロナウイルスの影響を考慮して、出願開始が9月15日に変更されましたが、今年は本来の日程に戻ります。国公立大を中心に新たに総合型選抜を導入する大学が出ており、受験関係者の間では「準備が間に合わなかった昨年と違い、今年は総合型選抜の出願者が増える」との見方が多いようです。(写真は、北海道大の2次試験に臨む受験生=2月25日)
受験生も大学側も状況が好転
新型コロナウイルスが2月以降に急速に広がった昨年は、一般選抜(一般入試)ができるかどうか見通せない状況だったため、総合型選抜や学校推薦型選抜(指定校推薦)に受験生が流れるのではないかとみられていた。しかし、実際には志願者は増えなかった。河合塾のまとめでは、総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた志願者数は、前年に比べて国公立大は98%、私立大は93%にとどまった。学校が休校になって部活動や生徒会活動などができず、各種大会も中止になったことで、志望理由書に書く活動実績が乏しかったため、とみられる。
駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長はこう話す。「昨年は9月の出願開始まで時間がなく、高校は十分な指導ができなかった。今年は大学側も早い段階から高校に対して、『大会がなくても努力したプロセスを見たい』などと周知している。私立大は今年春の入試で志願者や入学者を減らしたところが多いので、総合型選抜などで受験生を確保しようとすると思う」
やはり「受験生も大学側も総合型選抜を受けやすい、実施しやすい状況になっている」と言うのは、河合塾教育研究開発本部の近藤治・主席研究員。「22年度入試では、国公立大が後期日程の定員を振り分けて、総合型選抜や学校推薦型選抜を増やそうとしている。昨年は、受験生にとって活動実績に書くことが乏しく、出願しにくい状況で、大学側も面接を対面で行うのかオンラインで行うのか手探りで進めていた。今年は高校の部活が春先から再開し、大学側も感染症対策の経験値が上がったことで、昨年とは状況が違う」
北海道大は、22年度入試から総合型選抜を新たに「フロンティア入試」として実施し、総合型選抜の募集人員を21年度の54人から144人に3倍近く増やす。北海道大で学びたいという強い意志を持つ学生を獲得することが目的だ。
学部・学科によって二つのタイプがある。TypeⅠは、医学部、歯学部、理学部地球惑星科学科、工学部の一部など、これまで総合型選抜を行ってきたところが主に移行し、「求める学生像」を示したうえで、1次選考では調査書などのほか、高校教員によるコンピテンシー評価を用いる。コンピテンシー評価は、高校時代の学習活動や諸活動について、学部・学科が示した評価観点ごとに複数の高校教員に評価してもらう。TypeⅡは、理学部数学科、物理学科、化学科、工学部機械知能工学科などが導入し、出願書類による1次選考後、2次選考では記述式問題を中心にした適性試験と面接を行う。
TypeⅠは大学入学共通テストを課すが、TypeⅡは課さない。出願は従来通り10月1日から。入試課は「フロンティア入試で、いい学生が入ってくれば広げていきたい」と話す。
富山大医学部医学科は、22年度入試で後期日程を廃止して総合型選抜を新設する。福島県立医科大も、総合型選抜を新設する。埼玉大経済学部は21年度入試から総合型選抜を導入する予定だったが、活用予定だった英語民間試験がコロナの影響で中止、延期される事態になったため、1年先送りにして22年度入試から導入する。