「STEAM」で未来をつかむ

水質汚濁の新たな検査法・外出自粛による会話量変化測定…高校生が東大で学際的研究

2022.01.14

author
斉藤 純江
Main Image

教科横断の学びが子どもを伸ばす

プログラムの意義について、東大生産技術研究所・次世代育成オフィス室長の大島まり教授は「このプログラムでは、社会的な課題がどこにあり、どのようにアプローチしていけば解決できるのかを、教科横断的な視点で探求していきます。課題解決に対するアプローチのトレーニングでもあり、専門教育の入門編でもあります」と話します。

次世代育成オフィスでは、これまでも企業や地域と連携して大学の研究資源を生かしたワークショップや教材開発などの教育活動を続けてきました。その知見を生かし、UTokyoGSCは探究的な学びを深めていけるプログラム編成にしているそうです。研究提案書を作成するまでの第一段階(毎年7~12月)では、統計学など研究に必要な基礎知識を身につけるとともに、最先端の研究やその背景にある社会的な課題などについて研究者から話を聞き、自分が取り組みたい研究テーマのイメージを膨らませる「STEAM(教科・科目横断)型学習」や、個人ワークとグループディスカッションを通して、自分の研究テーマについて目的や課題を精査し、研究のプロセスを検討する「STEAM型価値創造ワークショップ」の時間も設けられています。

3期生は女子が6割

21年7月からは、奥村さんたちの1期下にあたる第3期生向けに、第一段階の講座が始まりました。全国から応募のあった219人から選ばれた77人が、主にオンラインで月2回程度の講座を受講しました。北海道から沖縄まで全国の国公私立高に在籍する1、2年生で、女子が6割近くを占めました。研究者を目指している生徒もいれば、研究とはどんなものか体験してみたいと参加した文系の生徒もいるといいます。

前出の大島教授は「ある課題を解決するには、どの教科の知識が必要なのかを認識し、その教科を深く理解して、それらの知識を統合する、という作業を繰り返していかなければ、答えは導き出せません。理数系に基軸を置いていても、歴史や公民、英語など、幅広い教科の知識が必要になることもあります。大学の研究は学際的で、高校生がそれに近い学びをできるのが教科横断型的なSTEAM教育だと思います」と力を込めます。

3期生は10月の中間選考で選抜された40人ほどが研究提案書を作成して11月下旬に発表し、さらに選抜された約20人が第二段階(翌22年2~12月)の研究活動を中心としたプログラムへと進みます。第二段階では、それぞれの研究テーマに沿った研究室に配属され、12月に最終リポートを提出する予定です。大島教授は「科学技術の分野に進んでほしいという願いはありますが、それだけにとどまらず、社会全体を見渡して課題を見つけ、解決できるような、社会を牽引(けんいん)するリーダーとして活躍できる人材になってくれることを期待しています」と話しています。

東大生産技術研究所・次世代育成オフィス室長、大島まり教授
東大生産技術研究所・次世代育成オフィス室長、大島まり教授
バックナンバー
新着記事
新着一覧
新着一覧

ページトップ