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徹底した実践主義で子どもの心に寄り添う 早稲田大学教育学部本田恵子ゼミ

2021.09.15

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曽根 牧子
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◇早稲田大学教育学部教育学科学校心理学

「学校心理学」とは、学校教育や子どもの心の問題を、心理学的視点で解決する学問。子どもの内面に寄り添う考え方は、コロナ禍で行き詰まる学校・家庭での人間関係の改善にも役立つ。※写真は大葉から作った「自分だけの緑色」を、学生と分け合う小学生(撮影/朝日新聞出版写真部・張溢文)

8月中旬。教育学部の研究室に、夏休み中の小学生とその親4組が集まった。

 「身近な植物や野菜で染料を作って、和紙を好きなように染めましょう」

 講師の説明の後、子どもたちは、研究室の学生らとともに大葉やオシロイバナ、ニンジンなどの野菜や植物が、ペースト状になるまですり鉢ですっていく。やってみると意外と簡単。

 「うわあ、匂いが立ってきた」「不思議な色を作ろう」「僕、緑色をたくさん作ったよ。誰か使いませんか」と楽しげな声が飛び交った。

 本田恵子教授のゼミが主催する体験学習「遊ぼう会」の一場面だ。外遊びや創作活動を通じ、子どもの本来持っている感性や仲間づくりのスキルを育むことを目的に、月1回開かれる。

 小学5年生の娘と参加した母親は、「学生さんが適度な距離感を保ちながら、娘をよくほめてくれる。自然体でいられるので娘も楽しそうです」と目を細めた。

本田恵子教授(後列右から3人目)とゼミ生たち(写真/本田教授提供)
本田恵子教授(後列右から3人目)とゼミ生たち(写真/本田教授提供)

 本田ゼミの研究テーマは「学校心理学」だ。

 「今の学校教育の問題は、暴力行為の増加、小中学生の不登校の増加といった現象に表れるように、学校に『子どもが安心して自分らしくいられる場所』がないこと。画一の型にはまっていないと、はみ出してしまう今のシステムでは、子どもがありのままの状態でいられないため、不安やイライラを募らせてしまう」と、本田教授は指摘する。文部科学省の2019年度全国調査によると、暴力行為の発生は7万8787件、不登校の小中学生は18万1272人で、いずれも過去最多だ。

 さらに教授は、「コロナ禍によって自然体験、外遊びの機会が激減し、自ら問題を見つけて、解決する力が育っていません」と、危機感を示す。自然体験の多い子どもは道徳観があり、正義感が強く、自然に触れる体験をしたあとは、勉強に対してもやる気が出ることが研究から明らかになっているという。

 大切なのは「その子らしさ」を発揮できたか

 今回のワークショップでは、「草木染めという活動のゴールに向けて、いかに子どもたちが自分で考え、その子らしくアプローチできるかが大事」と、本田教授は話す。

 一方、サポート役の学生にとっては、子どもへの具体的な介入支援を学ぶ実践演習の場でもあった。子どもの言動の背景にはどんな心の動きがあるのか。不安が強い、イライラが高い時は、どのように安心させたり、有り余るエネルギーを変換させたりして導くべきか。心理学で「見立て」と呼ばれる作業である。

 「学校も親も、子どもに『こうしなさい』と型を与えっぱなし。『あなたはありのままでいいんだよ』という姿勢で、きめ細かく関わることが大切です」(本田教授) 

自然体験会が終わった後、子どもとどう関わったかを振り返る学生たち(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)
自然体験会が終わった後、子どもとどう関わったかを振り返る学生たち(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)

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