この先生と究めたい 大学 学びの最前線

徹底した実践主義で子どもの心に寄り添う 早稲田大学教育学部本田恵子ゼミ

2021.09.15

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曽根 牧子
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振り返り、改善点を見つけて学びを深める

 本田ゼミは、徹底した実践主義に加えて、振り返りを重んじる。この日も、子どもたちが帰った後、教授と学生たちは、「次々と発見して興奮するAくんの思考を深める声がけは?」「上手すぎる親御さんの隣で手が止まっていたBさん。自尊心を満たすために何をしてあげられたか」などと話し合った。

 本田教授は、人間関係を壊しやすい怒りなどの感情をコントロールする「アンガーマネジメント」の第一人者でもある。

 「自分の好きなように染めたい子もいれば、お手本の通りに染めたい子もいる。子ども一人ひとりの小さな言動をケアして、安心できる空間をつくってあげて」

 教授の導きで、学生たちは、自分の視点だけでは見えなかった子どもの心理状態に気付かされ、次の学びへとつなげていく。

 公認心理師をめざしている大学院修士2年の高木美和さんは、「親子の活動の時は、保護者の信頼を得ながら子どもに良いタイミングで関わり、声がけをするのが難しいと感じた」と振り返る。

振り返りの時間、草木で染めた作品を掲げるゼミ生の高木美和さん(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)
振り返りの時間、草木で染めた作品を掲げるゼミ生の高木美和さん(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)

 学部4年の黒田真帆さんは、「本田先生は『あの子は何を考えていたの?』『その時どうしたかったの?』と、子どもの行動に隠れている欲求をいつも考えている。私も子どもに寄り添う姿勢を忘れないようにしたい」と話した。黒田さんの夢は、特別支援学校の教員になることだ。

 理論と実践の融合をめざして

 本田教授は中学高校の教員時代、学校現場でのカウンセリングの必要性を感じて渡米し、コロンビア大学大学院でカウンセリング心理学博士号を取得。同大大学院も採用している「サイエンティスト・プラクティショナー(科学者であり実践家でもある人)モデル」に基づいて学びを深めていくのがゼミの特徴だ。 

 前期は、心理テストや面接などを組み合わせて子どもの心の問題を把握する「アセスメント」の知識・理論をおもに学び、後期は「アンガーマネジメント」の心理プログラムを中学校で実践する。

 ゼミ生は学部生、修士・博士課程の大学院生など約30人。高いカウンセリング・リテラシーを身につけた彼らの卒業後の進路は、公認心理師、スクールカウンセラー、行政の相談員、企業の人事部など多岐にわたる。

 「人間が好きな人、相手を輝かせてあげることが好きな人、学校の授業をおもしろくしたい人。一緒に学びましょう」(本田教授)

本田恵子教授(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)。「アンガーマネジメント研究会」代表として、衝動性の高い子どもの理解を深め、適切な対応を学ぶための研修会も実施。http://anger-management.jp/top.html
本田恵子教授(写真/朝日新聞出版写真部・張溢文)。「アンガーマネジメント研究会」代表として、衝動性の高い子どもの理解を深め、適切な対応を学ぶための研修会も実施

 

【大学メモ】

早稲田大学教育学部 高等師範部を母体に1949年、私学初の教育学部として設立。学部学生・大学院生数は4464人(2021年5月1日現在)。幅広い人間育成をめざし教員免許取得を義務づけない。

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