「探究」で高大接続

「探究の学び」経験者たちの大学生活【前編】 私立高→東京理科大・京都大

2021.09.13

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中村 正史
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日本の大学生の勉強時間が海外に比べて極めて少ないことはよく知られています。しかし、ベネッセ教育総合研究所の調査によれば、高校時代に自分の興味・関心事に主体的に取り組んだ生徒は大学での学習時間が長い傾向があります。主体的な学びという点で注目されているのが、2022年度からの高校の新学習指導要領でキーワードになっている「探究」です。高校時代に探究の学びを体験した人たちは大学でどのような生活を送っているのか、高校での学びが大学での学びにつながっているのかを追いました。(写真は、三田国際学園の高2の「リベラルアーツ」で修学旅行の内容をグループに分かれて議論する生徒と教諭)

今の自分は高校時代の経験でできている 高槻→京都大

倉場康太

話を聞いた人

倉場康太さん

京都大学薬学部2年

(くらば・こうた)大阪府高槻市の私立中高一貫校、高槻高校卒。20歳。

高校では課題研究が週2時間ありました。高2の時に太平洋のパラオの生活習慣から生じる肥満などの課題に取り組み、11月に現地でフィールドワークをしました。保健省や教育省で話を聞き、現地の高校生の家を訪ねて家族から実情を聞きました。現地でアンケート調査もしました。

この準備には、学校の週2時間の授業では足りず、家に帰ってからの時間や夏休みも費やして、文献やネットで調べたり、アンケートを作ったりしました。パラオの研究をしている大阪大学の先生が来校した時にも聞きました。

12月に京都大学でグローバルヘルス研究者の国際会議があり、「スペシャル・プレゼンテーション」として15分を与えられ、私ともう一人が海外の第一線の研究者を前に、パラオでのフィールドワークを英語で発表しました。ディナー会にも招待され、海外の研究者が寄ってきて、発表を評価してくれたうえで、「アンケートの対象者に偏りはないのか」などの質問を受けました。

ここでの指摘を生かし、研究の集大成として発表ポスターを完成させ、2週後に東京で開かれた文部科学省のSGH(スーパーグローバルハイスクール)の全国大会で発表しました。

高1の課題研究では、薬剤耐性菌を研究し、2月の台湾研修の際に、現地の高校や国立台湾大学で発表しました。

2年間の課題研究で国際的な健康問題に取り組んで、将来はこの分野で貢献したいと考えるようになりました。大学入試の問題にしても答えがありますが、課題研究の答えや解決方法はだれにもわかりません。答えがわからないことをやってみたい、研究してみたいと思いました。

南太平洋のパラオでフィールドワークをする高槻高校の2年生=同校提供
パラオでフィールドワークをする高槻高校の2年生=同校提供

自分が興味を持ったことを研究できるのは薬学部ではないかと考えました。研究者が基礎研究を通して生命現象を明らかにし、その知見をもとに薬がつくられます。その基礎研究に携わってみたいと思いました。

研究がしたかったので、京都大学を志望し、薬学部の特色入試に出願しました。提出書類の「学びの設計書」には、パラオのフィールドワークの活動や大学で研究したいことを書きました。

中学・高校時代の課題研究や学校行事を通じて、書く力がつきました。課題研究で書く機会が多かったことと、中学で文化祭の実行委員長、高校でも中心メンバーだったので、書く機会がたくさんありました。

今は基礎知識を学ぶ段階で、実験などはまだ始まっていません。基礎知識を身につけることは、研究者になるための必要条件です。同時に、今のうちから机上でできる研究をさせてもらおうと、専門科目の先生にお願いして、自分が興味のあることや疑問に思ったことを追究することをしています。1学年80人の学生がいますが、こういうことをしているのは私を含めて4人ほどです。何を研究課題にするかは決まっていませんが、大学院博士課程まで進んで、研究者になりたいと思っています。

高校と大学の教育はやはり違います。高校では受け身でも先生が寄り添ってくれますが、大学では自分で何を学ぶかを決めて、自分から能動的に動かないと物事は解決できません。困っていることがあっても気づいてもらえず、助けてくれません。また、高校時代のような対話を通じた学びは、1、2年ではあまりありません。

今の自分は高校時代の経験があったからできていると思います。課題研究を通じて、研究者に必要な未知のことを追究する姿勢が身につきました。もう一つは、学校の外に行って研究者に接する機会があったことです。自分でチャンスをつくらなければ、そういう機会は巡ってこないことを知りました。待っていれば先生が来てくれる高校と違い、大学では自分はこうしたいと相手に伝えなければなりません。高校時代に身についた主体的に学ぶ姿勢は、大学でも生かされています。

現在は勉強が忙しく、休める時がありません。大学で合気道部に入ったので、勉強との両立が大変です。練習が終わったら、一人暮らししている部屋に帰って、勉強しています。休日も基本的に勉強です。授業の課題は最近はだいぶ減ってきましたが、出てくる専門知識が増えてきて、自分で勉強しないといけません。

※高槻高校の取り組みはこちら

倉場さんが高校時代、パラオでのフィールドワークを英語でまとめた発表ポスター
倉場さんが高校時代、パラオでのフィールドワークを英語でまとめた発表ポスター

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