コロナ禍2年目の学び

コロナに負けない高度な国際教育プログラム「ダブルヒーリックス」 巣鴨中高の挑戦

2021.09.16

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市川 理香
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新型コロナウイルスの感染拡大がやまず、高校生の海外研修や留学などが困難になっています。国際教育にも熱心な東京圏と愛知県の進学校8校の先生たちが協力し、英語で知識と思考を深める高校生向けのオンラインプログラムを実施したのは、今年3月のこと。夏休みが終わってもパンデミックの収束は見えてきませんが、手応えを感じた先生たちは来年の夏に向け動き出しました。プログラムを主催した東京の巣鴨中学高校の2人の先生に聞きました。(写真は、オンラインプログラム「ダブルヒーリックス」の画面=巣鴨中学高校提供)

知識と思考の「二重らせん」

オンラインプログラム「ダブルヒーリックス(Double Helix=DH)」には、主催した巣鴨と、鷗友学園女子、駒場東邦、豊島岡女子学園、広尾学園の都内5校、千葉の市川、神奈川の洗足学園、愛知の南山女子部の計8校50人の高校生が参加した。英語での講義と質疑応答、課題シートの提出を基本とし、回を重ねてからは個人活動やペアワークも取り入れ、最終回では生徒がプレゼンテーションを行った。ほぼ毎日オンライン会議システムを使い、4週間にわたり実施した。

「DHは、二重らせんという意味です。『基礎知識の獲得』と『高次の思考』は、二つのらせんが絡み合うように存在するという考えを講座名に託しています」と話すのは、巣鴨中高国際教育部長の岡田英雅教諭。英国のトップエリートを講師に招き、長野・蓼科で行ってきた「巣鴨サマースクール(SSS)」がベースになっている。SSSに参加した生徒の「覚醒したかのような変容」を見てきた岡田教諭や国際教育担当の山崎大輔教諭は、その感動を他校の生徒とも分かち合いたいと、2020年3月に「東京スプリングスクール(TSS)」の開催を計画していた。ところが新型コロナウイルスの感染拡大で英国から講師を呼ぶことができなくなり、やむなく中止に。翌21年の実施も危ぶまれるなか、岡田教諭は「代わるものをオンラインでやってみたい」という気持ちに傾いていった。

今回のDHの講師は、芸術・医療・教育分野の第一線で活躍する研究者で、英国内外の教育機関でも教える5人。たとえば美術担当のエストリック先生は、ケンブリッジ大卒業後に名門パブリックスクールなどで美術史の授業を担当し、現在はアート誌の寄稿編集者として活動している。

エストリック先生の講義のテーマは、葛飾北斎の浮世絵やゴッホの油絵を見ての「絵画の分析」。生徒に論理的な分析と抽象的な思考を求めた。課題に取り掛かる前に、分析に必要な知識として美術用語の理解を促す。ビデオレクチャーを提供し、生徒のワークシートにコメントをつけてフィードバックするなど、「名門パブリックスクールの美術史主任も務めた人が、いかに本気になってDHの生徒と向き合ってくれていたかがわかった」と、岡田教諭は振り返る。2週目は、初回で得た知識を前提に内容をレベルアップし、3週目はペアワークでの分析へ。オンラインで作り上げたプレゼンテーションは、かなり高度な内容になったという。「生徒たちは、きちんとした知識があれば、より深く分析もできることを、身をもって知ったはずです」

これまで芸術や言語の分野を敬遠していた生徒からは、「文化的背景が異なっても問題ない理論的な分析が使われたので積極的に参加できた。この分析方法が面白く、大学の進路を考え直すきっかけになった」との感想が寄せられたという。

DHの修了証を手にする市川高校の女子生徒=本人提供
DHの修了証を手にする市川高校の女子生徒=本人提供

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