大学中退を防ぐために
ビジネス・ブレークスルー大学 「100%オンライン授業」でも高満足度の秘訣は「密な交流」
2021.09.17

コロナ禍で大学がオンライン授業を始めて1年半がたちますが、学生の評判はいま一つのようです。一方、16年前に「100%オンライン授業」をうたって大学院を、その5年後に大学を開学したのが、東京に本部を置くビジネス・ブレークスルー(BBT)大学です。学生の所在地は110の国と地域にまたがり、家族3世代が同時に入学するなど年齢層も多様で、近年は高校を卒業したばかりの「専業学生」も増えてきているそうです。学生の意識調査では、授業に「満足」「ある程度満足」は9割超。その秘訣を、事務局長の白崎雄吾さんに聞きました。(写真は、白崎さん〈右〉と専業学生の松本大海さんの個別面談。2月ごろから毎週金曜朝に行っている=2021年9月、BBT大学提供)
(しらさき・ゆうご)リクルートグループ2社を経て、100%オンライン授業のビジネス・ブレークスルー大学(文部科学省認可)を統括し、教員採用やカリキュラム開発に従事する。スポーツチームの研修講師としても活動しており、アスリートのセカンドキャリアを支援する一般社団法人APOLLO PROJECT理事も務める。
少人数説明会で出願前から交流
――最新のBBT大学の学生意識調査をみると、授業への理解度、満足度ともに、文部科学省による全国調査より明らかにいい結果になっていますね(下の表)。

昨年、コロナ禍に見舞われた多くの大学から、BBT大学独自の遠隔教育システムについてお問い合わせをいただくようになりました。しかし、システムを導入すればたちまち学生の学びが充実するわけではありません。前提として、徹底してアナログな作業、関係構築があります。
開学当初は「全てオンラインで完結する」という大前研一学長の考え方もあって、現在行っている様々な施策が最初からあったわけでもないんです。しかし、学生たちが密なコミュニケーションを求めている、ということは当初から分かっていましたし、それに応える施策を実行していくには教職員の負担が増すことも分かっていましたから、一挙に全てのことを進められたわけではありません。
様々な施策を試しては結果を見て、また見直す、というようなことをやり続け、ここ3年ほどでようやく手応えを感じてきたところです。ただ、いまやっていることが完成形ではありません。新しい大学像を求めて、また何か課題が見つかればすぐによりよい方法を模索して、実践、検証を繰り返していきます。教育は手間がかかるものです。
――授業はオンラインですが、入学後には「密なコミュニケーション」で関係性を築く態勢になっているわけですか?
「密なコミュニケーション」は、出願前からです。時系列に沿って説明しましょう。
出願前の施策として力を入れているのは「少人数説明会」と「個別相談」です。全てオンラインです。
もちろん「オンライン・オープンキャンパス」も行っていますが、1人、2人の参加者に対して行う「少人数説明会」は広報部職員が中心になって、いつでも求めがあれば開催しています。その結果、2020年度は143回になりました。確かに手間はかかります。しかし、なぜBBT大学なのか、何を学びたいのかをとことん聞いて、その人にBBT大学が合っているかを確認するために、大切な場となっています。さらに希望する人には、副学長や事務総長、事務局長が1対1で個別面談を行います。これも毎年50回ほどあります。さらに必要であれば、卒業生や在校生を紹介することも少なくありません。
結局、大勢を対象に行う説明会だけで、BBT大学に対する理解や適性をあいまいにしたまま入学してもらっても、中退する学生が増えるだけです。
そして、この少人数説明会や個人面談で入学前から教職員と学生が接点を持つことで、入学後もスムーズにオンラインを使ったコミュニケーションを交わせると思っています。
――入試から入学前にかけてはどんな施策があるのでしょうか?
まず入試では、一般選抜も総合型選抜も、副学長と事務総長が中心となって、1対1の面接を30分間行います。聞くことは「入学する目的」です。この面接も、選抜のためという目的とともに、入学前から接点を持つために行っている面もあります。
入学決定後は、高校生を中心とした「専業学生」になる若者を対象に、交流会を月に1回、オンライン上で行います。
こちらは学生同士の交流を目的にしていますが、ファシリテーター役として教職員が参加していますので、入学する前から「知っている教職員」ができます。入学後、スムーズに学生生活に慣れることにつながると考えています。