わが子を算数・数学嫌いにさせない習慣
「10個で1個のおまけ」vs.「1割引き」 お得なのはどっち?
2021.10.08

算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。パターン化した入試対策の影響か、受験生はそんな「暗記数学」のわなに陥りがちです。人工知能(AI)が急速に普及するなか、今後求められる算数・数学の力とはどんなものでしょうか。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の面白さを教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、「AI時代に必要な数学力」を説きます。(タイトル画:吉野紗月)
おまけにも二つのパターン
今回は、おまけと割引について考えてみましょう。いま、「定価1000円の商品を10%(1割)引きで販売」といえば、1000円を定価として、その10%の100円分を値引くことです。それゆえ、定価1000円の商品は900円で販売することになります。それと紛らわしいものに、「10個を購入すると1個のおまけ」というものがあります。とりあえず、その両者を比べてみましょう。
1個△円の商品を10個購入すると1個のおまけが付くとき、10個分と11個分の定価(円)はそれぞれ10×△(円)と11×△(円)です。したがって、11個の商品を10×△(円)で購入することになるので、値引き額は△(円)で、値引きの割合は、
△11×△=1
11
となります。これは、1割である
1
10
より小さい値なので、「10個で1個のおまけ」より「1割引き」の方が有利だと考えられます。
上で示した「10個で1個のおまけ」の考え方は、各商品におまけ券が1枚付いていて、おまけ券を10枚集めると、新しい商品を1つもらえることと同じかもしれません。しかし、これには小さい疑問が浮上します。それは、(A)「おまけ券10枚でもらえる新しい商品にも、おまけ券が付いている」のか、(B)「おまけ券10枚でもらえる新しい商品には、おまけ券が付いていない」のか、という疑問です。
ちなみに、10回分の切符を購入すると1枚の切符がおまけとして付く鉄道やバスの回数券は、(B)の立場の例です。また、最近はあまり見掛けなくなってしまったようですが、商品の箱に付いているシールのようなおまけ券を10枚集めて、それをお店に持って行くと新しい商品1個と交換してもらえるサービスは、(A)の立場の例です。
次に、(A)の立場のおまけをもう少し深く考えてみましょう。とくに、「(A)の立場の商品を大量に購入するとどうなるか」について考えてみましょう。
たとえば、その商品を100個購入したとすると、100枚のおまけ券で10個の商品がもらえます。そして、それに付いている10枚のおまけ券で1個の商品をもらえるので、100個分の代金で合計111個の商品をもらえることになります。
これは、111個の商品を100×△(円)で購入することになるので、値引き額は11×△(円)で、値引きの割合は、
11×△111×△=11
111
となります。これは、1割である
1
10
より小さいものの、
1
11
より大きい値になります。したがって、(A)の立場のおまけは(B)の立場のそれより、少しだけ得した気分になるでしょう。
【問題】
(A)の立場で考えるとき、商品を1000個購入したとすると、最初のおまけ券1000枚から100個もらえます。そして、それに付いている100枚のおまけ券でさらに10個をもらって、最後にそれに付いている10枚のおまけ券で1個をもらえます。したがって、1000個分の代金で合計1111個の商品をもらえることになります。この場合、値引き額と値引きの割合を求めましょう。とくに、値引きの割合については、
1
10
や
11
111
と比べてみましょう。