「地方」で学ぶ

一家で軽井沢に教育移住、探究学舎代表・宝槻泰伸さんに聞く いま「地方」を目指すワケは

2021.09.22

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葉山 梢
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都心部から離れた郊外や地方都市で、先進的な教育を実践する学校が次々と生まれています。背景には何があるのでしょうか。昨年、東京から長野県軽井沢町に一家で移住し、5人の子育てをしている宝槻泰伸・探究学舎代表に聞きました。

宝槻泰伸

話を聞いた人

宝槻泰伸さん

探究学舎代表

ほうつき・やすのぶ/1981年東京都生まれ。京都大経済学部卒。幼少期から「探究心に火がつけば子どもは自ら学び始める」がモットーの型破りな父親の教育を受ける。高校を中退し京大に進学。東京・三鷹で、子どもの探究心に火をつける興味開発型の塾「探究学舎」を運営。5児の父。

選択肢が広がった

――軽井沢に移住したのはなぜでしょうか。

妻が言い出したのがきっかけです。「もっと自然が豊かなところで暮らしたい」と。そのころ、従来のカリキュラムにとらわれずに子どもと大人が一緒につくる教育を目指す「軽井沢風越学園」が2020年に開校することを知り、まず妻が魅力を感じて。6年ほど前に夫婦で旅行したことがあり、もともと軽井沢にはいい印象を抱いていました。将来、軽井沢や京都のような歴史と個性のある場所に暮らしたいね、とボンヤリと考えてはいたんです。といっても、僕は学校なんてどこに行っても同じだと考えていましたし、移住には抵抗がありました。仕事があるから東京を離れられないという思い込みもありました。でも、思い切って移住した20年春、コロナ禍で仕事はリモートワークになり、探究学舎の授業もオンライン配信に。いまも月の80~90%は軽井沢にいて、快適な生活です。妻の英断には感謝しています。

――5人のお子さんたちにはどういう変化がありましたか。

最初は上の3人、今は年中~小6の5人全員が風越学園の幼稚園と小学校に通っています。一番大きな変化は、子どもたちが学園を大好きになったこと。親子ともに風越の自由さがとても気に入っています。

長男は趣味が増えました。ゴルフにスノーボード、水泳、スケート。軽井沢ならどれも気軽に行けるんです。スキー場は5分で行けて、町民は無料。プロスノーボーダーを目指している友達もできました。一方で、長男以外の4人はYouTubeやネットフリックスに夢中です。軽井沢に行ったからといって、全員が外で遊ぶようになるというわけではないんですよね。

――必ずしも自然の中で遊ぶわけではないのだとしたら、地方と都会の違いって何なのでしょうか。

自然に触れる機会が増えることは確かです。ただ、地方でもゲームやスマホはできる。インターネット社会では、都会と地方の環境の差が人間に与える影響は減っている可能性があります。地方は不便だという先入観があるかもしれませんが、実際に住んでみて不便さは感じません。オンライン会議システムのZoomでコミュニケーションをとり、iPhoneでデジタルコンテンツを楽しみ、Amazonで買い物をする。東京に住んでいたころと同じです。

いまや都会にあって、地方にないものはないとも言えるかもしれません。風越のような個性的な学校ができ、特に軽井沢はラグジュアリーなホテルやレストランだってある。ないものを強いて挙げるならディズニーランドや大きな美術館、劇場といった文化財かな。でも、そんな場所、普通は年に何回も行きませんよね。年に数回なら地方からでも行けます。逆に都会にないのは美しい山や川、森、温泉。今住んでいる家の周りは森なので、毎日散歩しています。たき火やバーベキューも家族でしょっちゅうやります。たき火はいいですよ。火があると人間は語り始めるんですよ。子どもも集まってきます。

探究学舎では19年にZoomで授業の配信を始めました。最初のころは「Zoomって何ですか」「つなげません」という問い合わせがたくさんありましたが、コロナ禍で一気に広がり、いまやZoomは常識です。インターネットのおかげで情報や体験、商品が物理的な移動を伴わずに手に入るようになりました。どこに住むかの選択肢が広がり、自分や家族のライフスタイルに合わせて選べるようになりました。

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