「地方」で学ぶ

県外から「教育移住」相次ぐ、長野・大日向小 国内初のイエナプラン教育校の学びとは

2021.09.28

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葉山 梢
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より良い学びを求め、「教育移住」を決断する人たちがいます。2019年に長野県佐久穂町で開校した茂来学園大日向小学校は、そうした家族が多く集まっています。日本初のイエナプラン認定校でもある大日向小では、どのような教育が行われているのでしょう。

「時間割」は自分で決める

大きなそろばんのような教具を使って足し算を学ぶ1年生の隣で、別の1年生は黙々と漢字ドリルに取り組んでいる。分からないところを教え合ったり、床に座って本を読んだりしている子も。「グループリーダー」と呼ばれる担任の先生が「算数の説明をするよ」と声をかけると、教室の隅に2年生が集まった。説明は15分ほど続いた。座って聞く子もいれば、立ったままの子もいて、見慣れた一斉授業とは違った雰囲気が漂っていた。

大日向小の時間割(下の表)には、「ブロックアワー」や「ワールドオリエンテーション」など、なじみのない用語が目立つ。国語や算数など基礎的な教科は、その週に学ぶ課題を子ども自身が考え、「わたしのスケジュール」という進度計画を作る。課題のことは「仕事」と呼ぶ。個々の計画に沿って仕事を進めるのが、冒頭で紹介した「ブロックアワー」の時間だ。

3年生の一週間のスケジュール例

黒板を使った一斉学習ではなく、自分のペース、やり方で学んでいく。このため、計画通りに進まなかったり、嫌いなことにはなかなか取り組めなかったりすることもある。「そこで上手に声かけするのがグループリーダーの仕事です。一人ひとりをよく観察して次のステップを考える。子どもたちも『仕事』は避けて通れないという意識は持っている」と宅明(たくみょう)健太教頭は話す。

午後は「ワールドオリエンテーション」に多くの時間が割かれている。こちらは、あるテーマについて、グループで話し合いながら各教科を横断的に学ぶ時間。今年の2学期のテーマは「技術」で、科学技術の発展に伴って公害や戦争といった問題が生まれた歴史的な側面に目を向けたり、身近な文房具の形や機能にどのような技術が生かされているかを考えたりする。話し合いの中で生まれた問いはブロックアワーの教科学習でも考え、学習をさらに深める循環的な学びを目指しているという。

大日向小学校
子どもたちが思い思いの場所で学ぶ「ブロックアワー」の授業(大日向小学校提供)

大日向小は、ドイツで生まれたイエナプランに基づく教育に取り組んでいる。この教育の発展・普及を目的とする「日本イエナプラン教育協会」の認定を受けた国内唯一の学校でもある。大きな特徴は、子ども自身が学習計画を立てることと、異年齢の集団で協働的に学ぶことだ。

通っている約130人の児童も、小1~3、小4~6という二つの異年齢グループ(学級)に分かれて過ごしている。併設された大日向中等部(フリースクールとして先行開校)に通う約10人の中学生も、現在は2学年が一つのグループになって学んでいる。小学校は学校教育法第1条で定められた「学校」(1条校)として2019年4月に開校した。来春には中学校も正式に開校し、小中一貫校になる予定だ。

イエナプランについて、宅明教頭は「世の中の常識や型に無理に合わせようとしないので、子ども自身が持つ好奇心や自由奔放さ、時には未熟さも含めて自然に出やすいスタイル」だと感じている。「子どもたちは自分で決めるプロセスを積むことで、人生の大事な選択の練習をしている。一人ひとりを大事にする教育のモデルを示したい」

一方で、宅明教頭は「地方だから、私立だからできるとは言われたくない」とも言う。大日向小は1条校なので、異色に見えるカリキュラムも学習指導要領にのっとっている。「指導要領をどのように日々の課題に落とし込むか、こんなに読み込んでいる学校はないと思う。私立も含めた公教育の中で、多様な学び方の選択肢ができるといい」と強調する。

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