一色清の「このニュースって何?」

中国恒大集団の経営危機 → 「バブル経済」の歴史を学ぼう

2021.10.01

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、深圳市にある中国恒大集団の本社が入るビル=2021年9月22日、井上亮撮影)

17世紀のチューリップ・バブル

中国の不動産大手の中国恒大集団の経営が危なくなっています。恒大集団は1996年に10人足らずで始めた会社ですが、中国の不動産ブームに乗って強気の投資を続け、2020年の売上高が5072億元(約8兆6千億円)にもなる巨大企業になりました。今では、不動産売買だけでなく、電気自動車の開発、テーマパークの建設運営、プロサッカーチームの経営など幅広い事業を展開しています。ただ、強気の経営は借金で進められてきたため、負債は21年6月末時点で1兆9665億元(約33兆円)に膨らんでいます。

恒大集団が短期間でここまで大きくなることができたのは、中国の不動産価格が明らかに「バブル」といえる高騰を見せたためです。恒大集団の本社のある深圳では、マンション価格が平均年収の60倍近くまで上がっているそうです。庶民はどうやっても買えない価格です。庶民の怒りを恐れる中国政府は不動産市場の過熱を冷やそうと、不動産会社の負債比率を抑える政策をとりました。つまり、恒大集団のような負債の大きい不動産会社は借金がしにくくなったのです。株式市場では、恒大集団が借金を予定通り返せなくなって倒産するのではないかと心配されるようになりました。倒産すると、銀行がダメージを受け、信用不安が起きかねません。また、ほかの不動産会社も危ないと思われ、危機が波及しそうです。こうした負の連鎖が起こると、中国経済がガタガタになり、日本を含む世界経済にも大きな打撃となります。

これは、1980年代後半から90年代初めにかけて経験した日本のバブル景気とその後の崩壊にとてもよく似ています。中国は日本のバブルについて熱心に研究しているといわれていましたが、それでもバブルの罠(わな)につかまった可能性があります。バブルは歴史上、繰り返し起こっています。それは人々がバブルの渦中ではバブルとは思わないためです。わたしたちは「これはバブルだ」と思えるような知識と感覚を身につけておきたいものです。

広辞苑によると、バブルは「泡」で、バブル経済は「投機によって生ずる、実態経済とかけ離れた相場や景気」とあります。つまり、中身(実態)のない泡のように、膨れすぎてパチンと破裂する経済のことです。少し抽象的な表現なので、歴史上起こった具体的なバブルを紹介したほうがわかりやすいと思います。

記録に残っているバブルの始まりとされているのが、17世紀のオランダであったチューリップ・バブルです。アメリカの有名な経済学者のガルブレイスが「バブルの物語」という本を書いていますが、その中にあるチューリップ・バブルについての記述をもとに紹介します。

チューリップは地中海東部あるいはそれより東で野生するユリ科の植物でした。16世紀後半にオランダにその球根が入ると、その花がとても高く評価されるようになりました。17世紀になると、その値段はどんどん高くなり、1個の球根が「新しい馬車1台、葦毛(あしげ)の馬2頭、馬具一式」と交換できるようになりました。球根は何回となく転売され、人手に渡るごとに価格は高くなりました。多くの個人が突然、金持ちになりました。価格上昇には際限がないように思われました。買うために借金がおこなわれました。ところが、1637年に終末が訪れました。どういう理由かわかりませんが、賢明な人や神経質な人が手を引き始めました。殺到した売りはパニックになりました。それまで買っていた人は、突然に一文無しになり、または破産しました。そしてオランダは長期にわたるかなりの程度の不況が続きました。

オランダといえば、今もチューリップが有名ですが、根付くまでにはこんな大騒動があったのです。チューリップの球根一つが売買を繰り返されて途方もない値段になるというのは、バブルのわかりやすい例だと思います。

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