この先生と究めたい 大学 学びの最前線
ありふれた資源からエネルギーを生み出す 同志社大学後藤琢也研究室
2021.10.13

◇同志社大学理工学部環境システム学科 後藤琢也(新エネルギーシステム)研究室
近年、二酸化炭素を発生させないクリーンなエネルギーとして、水を原料として得られる水素が注目を集めているが、資源として活用可能な物質や素材は水だけではない。後藤琢也研究室は、独自の視点から未来の社会の姿を描く。※写真は、後藤琢也教授(右下)と左から山田敦也さん(博士前期2年)、今井天哉(たかや)さん、小笹健太郎さん(共に博士前期1年)。今井さんは新たな磁石、小笹さんは山田さん同様、二酸化炭素からの炭素抽出の研究を行っている(後藤教授提供)
後藤琢也教授率いる新エネルギーシステム研究室のテーマは「宇宙からの視点で資源エネルギー問題を考える」。後藤教授のほか、学部4年生や大学院生、特任教授などメンバーは20人を超える。
「例えば、月に移住しようと考えた場合、環境は地球よりも過酷で資源も限られている。そこにどのように適応していくのか」 (後藤教授、以下同)
生きるために必要なものは、その場にある物質で作り出さなければならない。そこで注目したのが月のレゴリス。レゴリスとは岩盤に積もった堆積物の総称で、小石や砂などをイメージするとわかりやすい。
「月のレゴリスには鉄やシリコンが多く含まれています。レゴリスの大部分は酸化物ですから酸素を含んでいます。水や水素を含んでいるものもあると報告されています。そのままの活用は難しいですが、それぞれの物質を取り出し、組み合わせることで有効な資源となります」
二酸化炭素からダイヤモンドを生成も
月のレゴリスにも含まれる二酸化ケイ素は、高温で融解状態にして電解する溶融塩電解法によりケイ素(シリコン)と酸素に分けることができる。
「シリコンは太陽電池の原料です。シリコンと鉄などの金属を化合させると熱から電気を生み出す熱変換材料になります。隕石からヒントを得た、希土類を使わないモーター用磁石の開発など、多様な視点を持って研究を進めています」
これらの研究の興味深いところは、地球上でも同様に活用できる点だ。
「どれも物質としては、地球でもありふれたものですから。温暖化の原因として“悪者”となっている二酸化炭素も炭素に電解することで、軽くて強い素材であるカーボンナノチューブやダイヤモンドを作り出せます」
宇宙からの視点で考えることで、身近な物質も資源としての可能性が見えてくる。未来を見据えた研究はこれからも続く。
