文系、理系の壁

花まる学習会・高濱正伸さん「理系、文系という枠組みを鵜呑みにしているだけ」

2021.10.08

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江口 祐子
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「理系は女子に向かない」はウソっぱち

――政府は以前から理系に進む女子を増やすために、様々な調査や取り組みをしています。理工系の大学も試行錯誤していますが、なかなか増えません。

そのためには成功モデルをたくさん見せるのがいいです。女子は男子より将来のことをしっかり考え、社会をちゃんと見ています。例えば、昨今は女子の医学部人気が続いています。医師は実利としての成功が目に見えるからです。医師は専門性が高く、結婚や出産などを経ても続けていくことができる職業で、経済の状況にもほとんど左右されることがありません。また、社会貢献という意味でもわかりやすい。医学部を見ればわかるように、理系は女子にはできないというのはウソっぱちです。

それに対して、工学部はどうですか。「作業服を着て機械と向き合うの?」と思われ、将来像が見えにくいです。女子はシビアで大人なので、学部の先にある職業の魅力を見ています。理系女子を増やしたいなら、もっと実利的な魅力、お洒落でキラキラした物語を見せていくことが必要です。

私は日本棋院の理事をしているのですが、若い人に「なぜ囲碁を始めたのか」を聞くと、多くの人が漫画「ヒカルの碁」を読んだのがきっかけと言います。以前は、囲碁はおじいさんがするものというイメージでしたが、あれで一気に少年少女の囲碁ファンが増えました。子どもは憧れで動くという、いい例です。女の子が主人公で、誰もできなかったロケットを飛ばすとか、かっこいいドラマや漫画ができれば状況は変わると思います。

――国際的な学力調査を見ると、日本の子どもたちの数学力は男女を問わず、高いです。

日本の算数・数学のレベルは伝統的に高いです。江戸時代は歌舞伎、浮世絵、俳句などと同じように、算数の文化も花開いていました。芸術や娯楽を楽しむ感覚で、庶民が数学をたしなんでいました。その水準も世界的レベルにあったといわれています。

しかし、それが大学入試で終わってしまっているのが現状です。日本でイノベーションが進まないのは、大学入試で東大合格がゴールになっているからです。海外の大学は入学してからが勝負です。大学教育のあり方が大きな問題で、もっと議論したり、アイデアを出したり、頭をたくさん動かす授業を増やしていかなければなりません。

――数学教育のあり方を変えていくべきだという数学者もけっこういます。

算数・数学の面白さを教えてくれる先生に一人出会うと、関心が全然違ってきます。今の数学教育の問題は、正解することにこだわりすぎていて、面白さを伝えていないことです。一つの問題に対して教科書通りの解き方だけでなく、別解を出すだけでも違ってきます。

子どもに大切なのは、何かに没頭する経験です。算数の入り口としてパズルはお薦めです。パズルを家族で解いたり、問題を作って出し合ったりするのは非常にいい経験です。パズルは計算力とは全然違って、数理思考力の醍醐味を教えてくれます。パズルができる力は、仕事を生み出す力や世界を引っ張る力にもなり、おおむね数学に反映されます。

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