文系、理系の壁

花まる学習会・高濱正伸さん「理系、文系という枠組みを鵜呑みにしているだけ」

2021.10.08

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江口 祐子
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日本は高校の文理選択で文系、理系に分かれ、大学でも文理が交わることが少なく、社会人になっても文系、理系の意識を持ち続ける人が少なくないといわれます。文系、理系の分かれ目になるのが数学です。理系に進むのは男子が多く、女子が少ないのはなぜでしょうか。展開する進学塾で長年、多くの小中学生を教えてきた「花まる学習会」の高濱正伸代表に聞きました。(写真は、子どもたちに授業をする高濱代表=花まる学習会提供)

高濱正伸

話を聞いた人

高濱正伸さん

「花まる学習会」代表、NPO法人子育て応援隊むぎぐみ理事長

(たかはま・まさのぶ)東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。1993年、「花まる学習会」を設立し、95年には小学4年生から中学3年生までを対象にした進学塾「スクールFC」を設立。野外体験や保護者対象の講演会など活動は幅広く、2020年から無人島プロジェクトを始めた。算数オリンピック作問委員。日本棋院理事。

数学ができないのではなく、好き嫌いの問題

――日本は高校で文系、理系に分かれ、社会人になっても文系、理系の意識をひきずっていることが多いです。

枠組みを鵜呑みにしてしまうのです。文系、理系というのは、数学が好きか嫌いかということでしょう。今の時代、文系とか理系とか分けることにあまり意味はありません。明治時代には国力を上げるために法律系と理工系を分けて学ばせ、人材を育てることが急務だったのでしょう。でも今はそういう時代ではなく、どんな業界でも両方の力が必要なことは明らかです。特にデータを読める数理的なセンスは経営者には絶対必要です。

――理系に進むのは男子が多く、女子はまだ少ないです。なぜでしょうか。

集団として見れば、確かに算数・数学が得意な子は男子の方が多いです。数学オリンピックのメダリストも男子の方が多いですね。男子は一つのことにひたすら夢中になるマニア君がいて、オタク的に数学の世界にギューっと入り込む子がいるのです。それだけのことです。

私が運営している「花まる学習会」には、算数が特に得意な小学6年生を対象にした「スーパー算数」という授業がありますが、そこにいる子どもは6対1か7対1くらいの割合で男子の方が多いです。でも現在、1位にいるのは女子です。算数・数学が得意な女子はたくさんいます。

以前、ジャズピアニストで数学教育者の中島さち子さんと対談した時に、彼女が「数学を成績や順位、受験での勝ち負けで語るのではなく、もっとクリエイティブで楽しいもの、人の役に立つものという物語を付ければ女子も好きになるはず」と言っていて、なるほどと思いました。

XYとかサイン、コサインなどというのは、国語や社会に比べて抽象度が高く、女子は心が踊らないのです。できる、できないではなく、好き嫌いの問題です。能力ではなく、好みの問題なのです。

――文系、理系を分けるのは数学ですが、確かに数学は嫌いになりやすい教科ですね。

以前、「花まる学習会」を卒業した女子で、東大の理系学部や医学部に進んだ子たちを集めてインタビューをしたことがあります。「どうして理系に進んだのか」という質問に対して、答えはほぼ一緒でした。「高校の中で数学が得意な方にいたので、その座を降りたくなかった」「復習ノートを真面目にコツコツやったから、数学が得意になった」。復習ノートというのは、できない問題があったら、「なぜそれができなかったのか」という理由と、その問題を解くうえでのポイントや教訓、発想法を書いていくものです。中3までに復習ノートを仕上げれば、高校でも数学はぐっと伸びます。

ですから数学の成績によって、文系、理系が決まるという枠組みは、違うと思います。数学を伸ばすには、やはりできなかったことを逃げずにコツコツとやる力、一言で言えば「真面目さ」が絶対に必要です。

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