文系、理系の壁

芝浦工大・大坪隆明理事「『理系女子はお得』情報が浸透していない」

2021.10.14

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中村 正史
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日本は高校の文理選択で文系、理系に分かれ、大学でも文理が交わることが少なく、社会人になっても文系、理系の意識を持ち続ける人が少なくないといわれます。大きな課題の一つは、女性の理系進学がなかなか増えないことです。芝浦工業大学附属中学高校の校長を9年務める間に共学化を進め、現在は芝浦工業大学でキャリア担当などを務める大坪隆明理事に、現場の様子や女子を増やすための方策を聞きました。(写真は、芝浦工業大で開かれた「工学女子を育てよう!プロジェクト」。女子学生が女子小中学生にロボットプログラミングを教えた=同大提供)

大坪隆明

話を聞いた人

大坪隆明さん

芝浦工業大学理事、前・芝浦工業大学附属中学高等学校校長

(おおつぼ・たかあき)早稲田大学教育学部卒。約6年間、東南アジアで日本語教育に従事した後、1992年に芝浦工業大学に事務職員として入職。就職課長、学事部長などを経て、2012年から21年3月まで芝浦工業大学附属中学高等学校校長を務めた。21年4月から大宮キャンパス長、学事本部大宮学事部長、理事(キャリア就職、地域連携担当)。

附属校の共学化で男子にも競争心

――芝浦工業大学附属中学高校の校長を今年春まで9年務めている間に共学化を進めました。

高校は2017年から女子を受け入れ、中学も今年4月から受け入れました。共学化したのは、大学サイドと社会からの要請です。中高一貫校を共学化するのは、生徒募集が厳しくなって裾野を広げるために共学にするケースが多いですが、そうした理由ではなく、外発的な理由によるものでした。社会的に女子の活躍が求められる中で、理工系人材を育てる大学として女子学生や女性研究者を増やすことが課題であり、そのためには中高を共学化すべきという結論になりました。

――共学化したことで学校の変化はありましたか。

附属校は中学が1学年160人、高校から50人が加わります。17年、高校に女子の1期生21人が入りました。理工系大学に進学するという思いをお互いに共有して強い団結を築いてほしいという思いから、高1では男女を別クラスにし、2年から同じクラスにしました。結果としてはよかったと思います。「ずっと女子クラスでいきたい」と言っていた生徒がいましたし、理数科目が苦手な女子を少人数でフォローすることもできました。

学校に起きた大きな変化は、勉強に向かう意識のレベルが男子とは違ったことです。女子は真面目な生徒が多く、初期の頃は自習室で勉強するのが当たり前でした。数学や物理も女子が学年上位でした。それで男子にも競争心が出てきました。

――共学化して4年経って、直面している課題はありますか。

女子の受験者がなかなか増えないことです。高校からの入学者は芝浦工業大学に進むことを前提にしているので、女子にとってはハードルが高いのです。入ってくる女子は、保護者も理系のことが多いです。父親や母親の仕事と結びついているので、理工系に進むことに抵抗がありません。保護者が2人とも文系だと、女子が理工系大学に進むことに「なんで?」という気持ちがまだあるようです。

中学生の女子が得る情報は限られていて、芝浦工業大学を出れば、建築家とかコンピューターサイエンスなどの分野で活躍できるというのが伝わっていないこともあります。

――文理選択にも親の影響は大きいです。

附属校の校長をしていた時は、学校説明会で母親に「私は昔、数学ができなかったなどとは絶対に言わないでほしい」と伝えていました。「女子は数学ができなくてもいい」という社会の雰囲気が、女子を理系から遠ざけていると感じるからです。10年前、大学と連携して理系教育を強く打ち出そうと、プログラミングの授業を取り入れましたが、ある母親から「うちはけっこうです」と言われたこともありました。女子だけでなく、男子に対しても保護者の影響は大きいです。

文系には主に文学や歴史学といった人文科学と、経済学や法学などの社会科学がありますが、女子の保護者、特に母親がイメージする文系は人文科学にとどまっています。もう少し広くても、せいぜい心理学とかです。

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