「地方」で学ぶ

来春開校! 金沢学院大学附属中学校は「学校・塾一体型」で勝負をかける

2021.10.07

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矢野 耕平
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来春、金沢市に開校する予定の金沢学院大附属中学校。いま、塾と一緒に学校づくりを進めています。寮も完備し、地元だけにとどまらず全国各地から生徒を募集します。現地を訪れた、中学受験専門塾「スタジオキャンパス」(東京)を運営する矢野耕平さんが報告します。(写真は、金沢学院大附属高の校舎。附属中の生徒も同じ建物で学ぶ=金沢学院大提供)

「学校・塾一体型」の教育システムを導入する新設校が登場!

「水と油」ということばがある。皆さんがご存じの通り「しっくりと調和しないこと、たがいに性分の合わないもの」をたとえた慣用表現である。

「学校と塾」。この組み合わせを目にしたとき、「水と油」の関係に感じられるのではないか。

たとえば、公立小学校の場合を考えてみよう。

塾通いをして中学受験に臨む子どもたちは、膨大な時間を費やしてハイレベルな学習に打ち込むことになる。一方で、小学校の教員にはそんな姿に眉をひそめることもある。放課後は「小学生らしく」体を動かしたり、友人たちとの交流を温めたりする時間にしてほしいと望んでいるからだろう。また、私立中学受験の道を選ぶことを公教育が否定されたと考える教員がいるのかもしれない。

ところで、「水」と「油」はある物質を加えると互いに混じり合えることを知っているだろうか。

それは「界面活性剤」である。せっけんや化粧品、医薬品などはこの物質を利用して作られているものが多い。

「学校」と「塾」。一見相いれなさそうな両者が融合するための「界面活性剤」は果たして存在しないのだろうか。

来年度、金沢の地に新しい私立中高一貫校が誕生する。その名は「金沢学院大学附属中学校」。

運営する学校法人は現在、「大学」「短期大学」「高校」を有しているが、どのようなコンセプトで中学校を立ち上げるのだろうか。聞けば、地元・金沢のみならず、寮制度を整えた上で、東京や大阪、名古屋にも入試会場を設け、広範囲にわたって入学生を募集するという。

この金沢学院大学附属中学校は、既存の学校にはない斬新な試みをおこなう。

それが「学校・塾一体型」の教育システムの導入である。

金沢学院大附属高校の正門=2021年7月、矢野耕平さん撮影
金沢学院大附属高校の正門=2021年7月、矢野耕平さん撮影

「新しい学校をつくろう!」ワクワクがあふれるミーティング

「それでは、今日はみんなで円形になっていろいろと話しましょうか」
その場に入ってくるやいなやこう切り出した男性。そこにいた人たちが自身の使用している教室用机と椅子を即座に動かし始め、たちまち話し合いの輪が生まれた。

ここは来春開校する金沢学院大学附属中学校の教室のひとつ。先ほど声を発した男性、実はこの学校の教員ではない。

民間教育機関であり、進学塾経営や教育コンサルティングを手掛ける「プラスティー教育研究所」の代表を務める清水章弘さんだ。

清水さんは続ける。

「さて、今日は先生方の授業とわれわれプラスティーの手掛ける校内塾のカリキュラムについて意見交換をしましょう」

そう言って、清水さんは具体的な説明を始めた。聞けば、金沢学院大学附属中学校のカリキュラムは教員たちの授業と、プラスティーの企画する校内塾の講義内容が密接にリンクしていて、それに参加する子どもたちの学びをより深められるように設計しているらしい。かいつまんで紹介すると、プラスティーが校内塾で先取り単元の「速習講座」を実施し、そのあと、学校教員が授業内でその単元内容を復習できるよう丁寧に指導していく。それを受けて、さらにその単元の応用的な講座をプラスティーの講師たちが担うという流れになっている。また、定期テストは学校教員たちとプラスティーの講師たちが協働で作成するとか。

清水さんの説明が終わるとすぐに学校教員たちが次々と挙手をして、意見や質問をぶつけている。

白熱した場ではあるが、わたしがびっくりしたのは、皆が一様にワクワクした雰囲気で、この場を思い切り楽しんでいるところだ。

実はこの場に集まった教員たちの大半は、金沢学院大学附属高校の授業をいまは担当していない。

来春からの中学校開設に合わせて、「新しい学校を自分自身の手でつくりたい」という思いを持って、この地で教壇に立つことを決意してやってきた人たちだ。関西の有名私学や石川県内の公立高校などで勤務していた腕利きの教員たちがそろっているという。

なるほど。この場に集う人たちにオープンマインドの雰囲気が感じられるのは、そのためなのかもしれない。

そして、ここには金沢学院大学附属中学校という公的な教育機関と、プラスティーという民間教育機関の「垣根」など一切ないように感じられた。双方が密接に融合して「新設校プロジェクト」が動き始めているのだ。

若手の体育教諭が手を挙げる。

「いま外回りで広報活動をしているのですが、特進コース(難関大進学を目指すコース)の特長ばかりがとっさに思い浮かんで、総合コース(スポーツ・芸術に重きを置くコース)のアピールがいまひとつうまくできないのです」

その弁を耳にした清水さんはほほ笑む。

「これは嬉しい話です。だって、先生、以前はウチの学校は総合コースしか取りえがないっておっしゃっていたじゃないですか」

その場が温かな笑いに包まれた。

今年8月に開いた附属中の説明会には、多くの親子が訪れた=金沢学院大提供
今年8月に開いた附属中の説明会には、多くの親子が訪れた=金沢学院大提供

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