文系、理系の壁

大妻中高校長・成島由美さん「女子に『21世紀のお針箱』を授けたい」

2021.10.20

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中村 正史
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日本は高校の文理選択で文系、理系に分かれ、大学でも文理が交わることが少なく、社会人になっても文系、理系の意識を持ち続ける人が少なくないといわれます。大きな課題の一つは、女性の理系進学がなかなか増えないことです。そうした中、理系教育に力を入れる女子校が増えています。校長着任以来、4年半余りで学校の様子や生徒、保護者の意識が変わり、理系志望が増えている大妻中学高校の成島由美校長に、その背景を聞きました。(写真は、ICT教育にも力を入れる大妻中学高校=同校提供)

成島由美

話を聞いた人

成島由美さん

大妻中学高等学校校長

(なるしま・ゆみ)東京女子大学文理学部史学科卒。福武書店(現・ベネッセコーポレーション)に入社。社内最年少の35歳で執行役員に就き、グループ会社取締役などを務める。在職25 年の節目で新たなキャリアに挑戦するため、早稲田大学大学院経営管理研究科マネジメント専修修了。2017年4月から大妻中学高等学校校長に就任。ベネッセコーポレーション顧問を兼任。

文系、理系が7対3から5対5に

――今春の卒業生の進路データを見ると、自然科学系40%、社会科学系35%、人文科学系19%、家政・芸術・体育系6%となっていて、理系進学が多いです。

275人の卒業生のうち、大学合格実績では44%が理系でした。進学先の文系と理系の比率は6対4ですが、今の高1、高2の志望は5対5になっていて、理系志望が増えています。私が2017年に校長になった当時は、7対3で文系が多数でした。

今年の合格者の特徴は国公立大学が顕著で、合格者33人(現役30人)のうち28人が理系の学部です。うち医学部医学科にも15人(現役4人)が合格しました。

医学部への進路指導のため、昨年、沖縄の昭和薬科大附属高校で進路指導を担当して琉球大医学部などに多数の合格実績を出してきた森弘達さんを主幹として招きました。今年度から「医療系探究講座」を土曜午後に開き、医療現場で活躍する医師などに話してもらっています。受講者は学年が下がるほど多く、中1は80人と学年の3割近くが受けています。

高2向けの「STEAM探究講座」も今年度から始めました。STEAM分野(科学、技術、工学、芸術、数学)を強化するためです。分子細胞生物学者の石浦章一・東大名誉教授、数学者の西村圭一・東京学芸大大学院教授、アーティストの末永幸歩さんらに話をしてもらうほか、青山学院大アカデミックライティングセンターと連携して、論文の書き方についても学んでいます。高2で進路を考えるタイミングで、文理融合した内容を学んでもらいます。

――高2で文系、理系クラスに分かれるのですか。

クラスは分かれません。国立文系・理系、私立文系・理系と生徒の志望があるので、それによって生徒が受ける授業を選択します。文系に進む生徒も医学部に進む生徒も同じクラスにいます。今年の高3は文系志望がやや多いですが、高2以下は5対5です。

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