「地方」で学ぶ

英ハロウスクール、日本に開学予定 どんな教育目指す? なぜ岩手・安比に? 初代校長に聞く

2021.10.15

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山下 知子
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英国首相をつとめたチャーチルやインド初代首相ネルーらが学んだ450年の歴史を持つ英国のパブリックスクール、ハロウスクール。そのインターナショナルスクール「Harrow International School Appi Japan(ハロウ安比校)」が2022年8月、スキーリゾートとして名高い岩手県八幡平市の安比高原にできます。Year7〜13(日本の小学6年〜高校3年に相当)にあたる男女を全世界から受け入れ、将来的な定員は920人。日本で最大規模の全寮制インターナショナルスクールとなる予定です。目指す教育は何なのか、なぜ安比高原なのか。ハロウ安比校初代校長のミック・ファーリーさんに話を聞きました。(写真は、ハロウ安比校の校舎イメージ=同校提供)

ミック・ファーリーさん

話を聞いた人

ミック・ファーリーさん

ハロウ安比校プロジェクト総責任者/初代校長

(Michael Farley) 英国出身。2003~09年、ブリティッシュ・スクール・イン・トウキョウで校長を務め、在任中に英国の私立学校監査局ISIから最優秀レベルの学校として認定される。12~19年、ハロウバンコク校で校長を務める。AISLハロウグループ・オペレーション・ディレクターを経て、現職。

自然環境は日本のブランド 「世界が日本に来る」

――ハロウインターナショナルスクールは1998年のバンコク校を皮切りに、アジアで多くの学校を運営しています。さらに日本校を開校する狙いは何でしょうか。

英国は第1次世界大戦前から、特に東南アジアとのつながりが強く、当時の王族らが子息を英国のハロウスクールで学ばせていました。そうした歴史などから、1998年にタイ・バンコクにインターナショナルスクールを設けました。2005年に北京校を開き、現在は上海、重慶、香港など、中国を中心にアジアで24の学校を運営しています。ハロウ安比校は日本では初めての学校であり、またハロウインターナショナルスクールとして初の全寮制の学校になります。授業は全て英語で、Year12、13(高2、3)では英国の教育システム「Aレベル試験」のカリキュラムに沿い、高校卒業および大学入学の国際資格を取得します。

英国の教育は、個々人を伸ばしていくことに力があり、こうした教育が近年、アジアでも求められていると強く感じています。また、日本で暮らす英国の駐在員らから本格的な英国の学校がほしいとの声も聞きますし、日本国内ではインターナショナルスクールや全寮制学校への関心が高まっています。日本での開学が求められていると思いました。

ハロウ安比校には、香港、台湾、シンガポール、ベトナムなどのアジア諸国・地域を始め、英国や米国、豪州などからも問い合わせを頂いています。「世界が日本に来る」。そんなイメージを持って頂ければと思います。

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上空から見たハロウ安比校のイメージ図=ハロウ安比校提供

――なぜ安比高原だったのでしょうか?

世界中から生徒を募集しやすく、保護者が子どもに会いに行きやすい国で、豊かな自然と安全を提供できる場所として、日本の安比高原に決まりました。自然環境の素晴らしさは、日本のブランド。世界に誇れるものがあります。都会の雑多なものから離れ、安全な環境で心身ともに健やかに育ってほしいと思っています。

英国のハロウスクールはロンドン郊外の自然豊かな環境の中にありますが、ハロウ安比校はさらに自然と一体となったような環境です。スキーやスノーボード、ゴルフなどに思い切り取り組んでほしいですね。冬は多くて週4日、スキーやスノーボードができる機会も設けています。

――安比校ならではの取り組みは? また英国のハロウスクールと共通する教育は何でしょうか?

ハロウインターナショナルスクールの教育モットーは「Educational Excellence for Life and Leadership(人生とリーダーシップのための卓越した教育)」。このモットーのもと、「勇気」「名誉」「謙虚」「友情」といった四つの価値観に基づいた教育を行います。ハロウ安比校も同じです。社会や自分の周りの人々の力になり、リーダーとして責任ある行動を取れる人になることを大事にしています。

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ハロウ安比校の教育概念図=ハロウ安比校の学校案内冊子から

上は教育概念図で、英国のハロウスクールもハロウ安比校も同じ形です。コアとなるカリキュラムがあり、その周りに学術的探究と、生涯役立つスキルを身につけるスーパー・カリキュラムを用意しています。芸術史や天文学、プログラミングなど約15の活動を準備する予定で、生徒の好奇心、探究心を刺激しながら研究や弁論の力などを高めます。

「コ・カリキュラ」(表では「コ・カリキュラム」と表記)はスポーツや芸術などの時間のことで、日本語に訳すと「課外活動」になってしまいますが、「コア・カリキュラム」と同じぐらい重視しています。スポーツ以外では、チェス、クッキング、ディベート、演劇、ファッション、模擬国連、校内新聞などの活動を考えています。日本では受験に備えて部活や趣味を中断するケースが多いと聞きますが、長い人生を考えたらもったいない。海外のトップ大学を目指すのであればなお、必要な時間です。

授業は基本的に英語ですが、中国語と日本語のどちらかを必ず学びます。大学の講義が理解できる水準の力はもちろん、文化的な知識も身につけます。

後で詳しくお話ししますが、ハロウ安比校は全寮制をとります。全寮制とすることで、より個別化したケア(パストラルケア)ができると確信しています。例えば数学の点数が大幅に下がった生徒がいたとします。もしかしたら家族が病気で、勉強に身が入らない状況かもしれませんよね。そこで、その子の状況を多面的に把握するため、教師だけでなく、寮の先生にも生活状況や家族状況を聞き、必要があれば精神的なサポートも行っていきます。

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「ハロウハット」と呼ばれる麦わら帽子を手にした、ハロウインターナショナルスクールの生徒たち=ハロウ安比校提供

――野外での活動、自然の中で学ぶ意義をどう捉えていますか?

都会や人工物で囲まれた中では学べないこと、授業だけではわかり得ないことが、自然の中には多くあると思います。こうしたことをうまくカリキュラムに組み込みます。やったことがなくても大丈夫。未知なるものへの挑戦は大事です。また、ここで身につけたスポーツスキルは社会人になっても役立ちますし、もちろん生涯にわたってスポーツを楽しむことができます。

自然との関わりの中で、人は身体的、心理的な強さを得られます。ハロウ安比校では、最終学年で八幡平山の冬山登山を予定しています。山頂で1泊し、スキーで下山する企画です。計画や準備の大事さ、うまくいかなかった時に考え直す柔軟性、成功した時の誇りや自信、友情の深まり――。こうしたことはポジティブでないとやり遂げられません。困難な状況にあっても前向きに取り組める力をつけてもらいたいと思っています。

もしかしたら私が一番、開学を楽しみにしているかもしれません。私は英国の国立公園内にある小さな村で生まれ育ちました。教師としてのキャリアを積む前は、アウトドアの専門家として、自然とともにありました。自分の人生、自分のキャリアが一周したと思い始めた頃に安比校の話があり、私を育んだ環境に戻れることになったのです。ですから、とても興奮しています。

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