わが子を算数・数学嫌いにさせない習慣

当たり前のようで奥が深い 「鳩の巣原理」を知ろう

2021.11.12

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芳沢 光雄
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算数や数学は、公式や解法を暗記し、数字を当てはめて正しく計算できれば、正解にたどり着ける――。パターン化した入試対策の影響か、受験生はそんな「暗記数学」のわなに陥りがちです。人工知能(AI)が急速に普及するなか、今後求められる算数・数学の力とはどんなものでしょうか。数学者で、小学生から大学生まで幅広く数学の面白さを教えてきた桜美林大学リベラルアーツ学群の芳沢光雄教授が、「AI時代に必要な数学力」を説きます。(タイトル画:吉野紗月)

4羽の鳩が3つの巣に戻ると…

今回は「鳩の巣原理」を紹介しましょう。これは、「3つの巣に4羽の鳩がいて、全部の鳩が巣に戻ると、どこかの巣には鳩が2羽以上いる」、あるいは「5段ある引き出しに16枚のシャツをしまうと、どこかの段には4枚以上のシャツが入る」というような性質です。したがって、「引き出し論法」とも言います。

皆さんの中には、「鳩の巣原理は当たり前な性質ではないか」と思う人もいるかも知れません。ところが、重要な数学の性質の証明に用いられていることもあるのです。さっそく、応用例を紹介しましょう。

【例1】ここに9人の生徒がいると、血液型と性別が同じ2人は必ずいる。

まず、図1に示した樹形図を参考にして、血液型と性別の組の個数は全部で8になることが分かります。したがって9人の生徒がいると、鳩の巣原理により、少なくともある2人は同じ組に属することになるのです。

次に、出生届には、生まれた年月日のほか、生まれた時(0から23)と分(0から59)も明記されています。それに関連して、例2が成り立ちます。

【例2】生まれた年は無視すると、生まれた月日と時(0から23)と分(0から59)、さらには血液型と住所地の都道府県名すべてが一致する現存する2人の日本人が必ずいる。

まず、樹形図の発想を参考にして、それらすべては何通りの組があるかを考えてみましょう。月日の366、時の24、分の60、血液型の4、都道府県の数47をすべて掛けると、
366×24×60×4×47=99083520
となります。この組の数9908万3520通りより、日本の人口約1億2500万の方が大きい数です。したがって鳩の巣原理により、結論が導かれます。

【問題】いま、体育館に600人の小学生が集まっています。このとき、血液型、性別、学年、誕生月のすべてが一致する2人の児童がいることを説明しなさい。

【解答】樹形図の発想を参考にして、それらすべては何通りの組があるかを考えてみると、血液型の4、性別の2、学年の6、誕生月の12をすべて掛けることになります。
4×2×6×12=48×12=576
となるので、576より体育館にいる人数600の方が大きい数です。したがって鳩の巣原理により、結論が導かれます。

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