「地方」で学ぶ

大自然の中で、公正で持続可能な社会の担い手を育む 来秋開校の白馬インターナショナルスクール

2021.10.29

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山下 知子
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高1まではPBL、高2、3は国際バカロレア

――具体的にどういった教育内容になりますか?

中1~高1は、「Project Based Learning(課題解決型学習、PBL)」を採り入れます。PBLは、答えのない複雑な課題に対して、生徒が少人数のグループで話し合ったり、調べたり、試してみたりすることを通じて解決を目指す学習方法です。その過程で、生徒は様々な知識やスキルを身につけます。地域の中に出ていく学びをいろいろと仕掛けていきたいと思っています。地元の学校との連携も試みていきたいですね。

16年から夏休みや冬休みにシーズンプログラムを子どもたちに提供しています。ある年のサマースクールでは、水力発電機を作り、白馬村を流れる川に設置しました。こうしたマイクロ水力発電を使っていけば持続可能な社会につながるかもしれない。そんなことを考えることができました。

校舎が立つ地域がより良い場所になっていくにはどうしたらいいかも考えました。村議2人とスキー場運営会社長、不動産会社長を前にプレゼンをしました。「空き家があって残念」という子どもたちの声には、大人たちからは「言い訳している場合じゃないですね」などと前向きな意見をもらいました。

サマースクールでは、「どこに答えがあるの?」なんて聞く子どももいました。自分で考えることに慣れていないんですね。「成績がつくんですか?」と尋ねた子もいました。でも、この子たちが悪いのではありません。そういう社会なんです。正解のない問いがあることを知るとともに、何か行動を起こせば社会や国を変えられるかもしれない、という経験を多く積んでほしいと思っています。

高2、3は、国際バカロレアのDP(ディプロマ・プログラム)を導入予定です。国内外の多くの大学の受験資格が得られます。白馬から世界に羽ばたいてほしいと思っています。

ホリデープログラムの様子=同財団提供
ホリデープログラムの様子=同財団提供

――来年9月に開校します。入学試験などは気になるところです。

当初は全寮制の予定でしたが、「移住して通いたい」という家族も出てきたため、通学も認めることにしました。地域とのつながりを考えれば、通学生がいた方が良いとも考えました。

初年度は、中学1、2年生(今の小学6年生と中学1年生)を募集します。最終的に生徒数は180人程度になる予定です。

試験はプロジェクト型学習を模擬体験してもらいます。過去2年分の学校成績や推薦状も頂きますが、最も大事にするのは面接。基本的には英語で行います。ただし、英語力がそこまでついていない生徒や地元の子どもも多数派にならない程度で受け入れたいので、日本語で面接を行うケースもあると思います。スイスの学校で学ぶ長女の例をみると、語学は1年あれば追いつきます。専門の先生をマレーシアから呼び、サポートもしていきます。

ゆくゆくは、寄付などで原資ができれば児童養護施設で育った子も毎年1人程度、受け入れられたら、と思っています。社会にはいろいろな子どもがいて多様です。学ぶ場そのものも多様であるべきで、多くの子に開かれた学びの場にしていきたいと思っています。

東京・渋谷の宇田川交番や埼玉県のさいたま新都心駅の駅舎などを手がけた建築家で、19年に亡くなった鈴木エドワードさんは「同じ釜の飯を食べた人を攻撃する人、同じ釜の飯を食べた人の出身国を相手に戦争を起こす人はいない」とおっしゃっていました。

持続可能な社会に戦争はいりません。テレビや本の中の外国ではなく、一緒にご飯を食べ、遊ぶ関係を白馬で作ってもらいたいと思っています。

――ご自身も白馬村の出身ではなく、移住されたんですよね。

ええ。移住する前から、白馬村へは何度か旅行で訪れていました。北アルプスをのぞむ圧倒的な自然を前に「日本にもこんな景色があるんだ」と感動しました。子どもが生まれ、長い目で見たとき、こうした自然の中でいっぱい体を使いながら育つことが、人生の豊かさにつながるのではないかと考えました。それで、長女が5歳になった09年に家族で移住しました。東京で事業を営む夫は週末、自宅に帰ってきます。

私自身、熊本でのびのびと育ち、小学校の帰り道にカエルをつかまえたり、トンボを追いかけたりしていました。この経験は、何ものにも代えがたいものだったと思っています。

白馬村を流れる松川と北アルプス=同財団提供
白馬村を流れる松川と北アルプス=同財団提供

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