文系、理系の壁

奈良女子大、お茶の水女子大が相次いで工学部を開設する理由

2021.11.01

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中村 正史
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「文系、理系の壁」の大きな課題の一つは、女性の理系進学者がなかなか増えないことです。そうした中、奈良女子大が2022年度に、お茶の水女子大が24年度に相次いで工学部を開設します。女子大に工学部ができるのは、国公私を含めて初めてのこと。東西の国立女子大が相次いで工学部をつくる理由は何なのでしょうか。(写真は、奈良女子大の正門正面にある重要文化財の記念館=同大提供)

個性を重視、選択性の高いカリキュラム

奈良女子大は現在、文学部、理学部、生活環境学部の3学部で構成される。生活環境学部は1993年に家政学部を改組したもので、53年に文学部、理学部、家政学部になって以降、長くこの3学部体制が続いていた。工学部は生活環境学部以来の新学部となる。

工学部長に就任予定の藤田盟児・生活環境学部教授は、工学部開設の理由をこう話す。

「ICT革命でソフトウェア中心に変わり、女性にとってもエンジニアへの障壁は少なくなりました。しかし、工学部はいまだに男性の学部のイメージが強い。奈良女子大は女性の活躍の場を広げる使命を持った大学であり、女性の工学教育の一つのモデルをつくろうと思いました。女子が工学や理系にハードルを感じていた原因はどこにあったのか、カリキュラムの工夫を通じてこの課題解決を考えるヒントを提示したい」

新設する工学部は、選択性の高いカリキュラムになっているのが特徴だ。学科はなく、教員の所属は人間情報分野と環境デザイン分野に分かれるが、学生はどこにも所属しない。基幹必修科目以外は学生が自由に科目選択し、何年生でも受講できる。造形デザインなどアート系の科目も入っている。3年前期にプレゼミを設け、四つのゼミを回って自分の専攻やキャリアを考える。

「学生の個性を中心に置き、各人のキャリア形成につなげます。学生が50人いたら50人のエンジニアを育てたい」(藤田教授)

就職に関しては、企業に事前調査し、ほぼ全ての企業から「女子のエンジニアがほしい」との回答を得た。

定員は45人。理学部や生活環境学部の定員を減らして工学部に充てる。教員もこれらの学部から移る。

奈良女子大は2021年度入試から、志望理由書や小論文、プレゼンテーションなどで選考する総合型選抜「探究力入試Q」を導入した。工学部は3割以上を「探究力入試Q」で採る予定。一般選抜(一般入試)では数学Ⅲを課さず、「学部全体で2割くらいは文系の受験生に来てほしい」と藤田教授は言う。

工学部設立にあたって参考にしたのは、米国のハーベイ・マッド大学(カリフォルニア州)とオーリン工科大(マサチューセッツ州)の二つのリベラルアーツ系の工科大学だ。女子が4~5割在籍し、社会や人間などの問題を学んだ上で工学の専門科目を組み込むカリキュラムになっている。

藤田教授は「一般教養的な教育に力を入れている工科大学は女子の比率が高いことを知り、リベラルアーツを中心にしたカリキュラムにしました。女性に興味を持たれない工学部をつくっても意味がありません」と話す。

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