文系、理系の壁

女子大初、奈良女工学部は「全員バラバラのことをやるのが理想」 学部長就任予定の藤田教授

2021.11.04

author
葉山 梢
Main Image

奈良女子大に来年度、工学部が誕生します。国内の女子大では初の工学部。いま女子大に工学部をつくる目的は何なのでしょうか。学部長に就任予定の藤田盟児教授に聞きました。
(写真は、測量の実習をする奈良女子大の学生たち=藤田教授提供)

藤田盟児

話を聞いた人

藤田盟児さん

奈良女子大学教授

(ふじた・めいじ)1960年愛媛県生まれ。東京大学大学院工学研究科建築学専攻第1種博士課程修了。博士(工学)。名古屋造形芸術大助教授、広島国際大教授を経て現職。「和室学」(平凡社)、「日本建築様式史」(美術出版)、「中世的空間と儀礼」(東京大学出版会)ほか共著多数。

社会や人間への問いから始まる工学へ

――奈良女子大に工学部をつくることになった経緯を教えてください。

今、女性エンジニアを増やすべく世界中でいろいろな試みがされています。工学はソフトウェア中心に変化し、女性にとっての障壁は少なくなり、工学部への女子の進学率も15%程度まで上がってきています。この動きを加速しないといけないのに、いまだに男子の学部というイメージが強いのが問題です。

物を開発するチームに女性が15%しかいなければ、どうしても男性中心の物しかできません。つまり今の産業界は男性中心の物しか作れていないということです。女性が欲しい物を作れず、ビジネスチャンスをつかめないでいるから、企業は女性エンジニアを欲しがっています。私たちの調査でも企業のほとんどが「欲しい」と答えており、就職は全く心配していません。

奈良女子大は、女性の活躍の場を広げる、女子教育のモデルをつくるという使命で設立されています。2016年からは同じ国立の女子大であるお茶の水女子大と、大学院の生活工学共同専攻をつくっています。その頃から工学部をつくろうという意識はありました。一番大きなトリガーとなったのは、来年4月の奈良教育大との統合です。奈良教育大には工学系の教員がいるし、小中学校、高校の理系離れや、教員養成課程での理系の壁という問題を抱えています。ただ、教育大は男女共学ということがどうしても変えられず、一緒につくるのはあきらめました。奈良教育大の先生には非常勤で入ってもらいます。

新学部をつくるといっても、国立大学は私立と違い全体の定員や教員を増やせません。既存の生活環境学部と理学部から定員や教員をかき集め、1学年の定員45人でスタートします。

――なぜ理系、特に工学系を選ぶ女子が少ないのでしょうか。

一つは、今までの工学がメカニカル系だったということがあります。女性は、機械より人間や社会に興味を引かれる人が多いのではないでしょうか。これからはプログラミングが中心になるので、ハードルは下がると思います。

工学部のカリキュラムを作るにあたり、米国のリベラルアーツ系の工科大学を参考にしました。米国も工学系の女性は決して多くありませんが、社会科学を学んだ上で専門性を組み立てていくリベラルアーツ系の工科大学は4~5割が女性です。社会や人間についてきちんと学べる工学部にしないと、魅力的に見えないのだと感じました。「もっと体の調子をよくするにはどうしたらいいのか」「もっと社会をよくするにはどうしたらいいのか」といった問いから始まる工学にする必要があります。

従来の工学部はほとんど男性だけという環境で、行きにくかったということもあるでしょう。他にも、女性が理系への進学にハードルを感じている部分はどこか、なぜ文系に偏るのか、考えるヒントをカリキュラムの工夫を通じて得たいと思っています。

新着記事