どうなる中学・高校入試
聞いて解く算数、スマホ持ち込みOK……私立中で広がる「新タイプ入試」 筆記で測れない力を問う狙いとは
2021.11.09

スマホで必要な情報を検索
東京女子学園中(東京都港区)は20年度入試から、「スマホ持ち込みOK」の試験を実施している。私物のスマホや学校が用意したタブレット、図書室にある資料を使って必要な情報を探し、考えをまとめる。
今年度に出されたのはこんな問題だった。
「シュークリームは、沖縄と北海道で1日にどちらがより売れていると思いますか。どうしてそのように考えたかを、調べた情報を用いつつ、個数を予測し、数字と式も使って書きなさい」
外部とのやり取りは禁止。初年度は受験生の行動観察をするために一人一人の様子をカメラでチェックした。受験生は両手でスマホを操作し、素早く検索する。そもそも「カンニングして答えられるような問題ではない」と翌年度からカメラによるチェックはやめた。
同校の河添健校長は20年3月まで慶応義塾大湘南藤沢キャンパス(SFC)の総合政策学部長を務めていた。その経験を踏まえ「情報社会ではフェイクニュースを見抜き、根拠を示しながら自分の考えを主張できることが求められる。検索した情報をコピペしたリポートを出すような大学生にはなってほしくない。塾で教わる受験勉強には向いていなくても、高い意識で未来志向を持つ子に来てもらいたい」と力を込める。
同校は今年度から、「探究の時間」にデータサイエンスの授業も始めた。スマホ持ち込み入試の受験生は20年度は5人、21年度は1人だけだったが、探究的な学びに意欲的に取り組める生徒が、「面白そう」「受けてみたい」と思えるような出題を続けていきたいという。

首都圏模試センターの北一成・教育研究所長によると、新タイプ入試には、公立中高一貫校の適性検査に似た「適性検査型」や、知識より発想力や創造力を問う「思考力型」と呼ばれるタイプなどがある。実施する私立中は、14年度は15校だったが、21年度は152校と年々増えているという。聖和学院中(神奈川県逗子市)の「ビブリオバトル(読書プレゼン)入試」や、藤村女子中(東京都武蔵野市)の「ナゾ解き入試」など、ほかにもユニークな入試を実施している学校がある。八王子実践中(東京都八王子市)のように、4科目・2科目入試を廃止し、適性検査型や自己表現型など4種類の新タイプ入試だけにした学校も登場している。
北さんは「奇をてらったように見えるかもしれないが、この先の大学入試や社会で求められる力を先取りした入試形態といえる。これまでとは違った評価軸で子どもたちの資質や潜在的能力を見いだそうという考え方が広がってきている」と指摘する。教科型の筆記試験のような対策は取りにくいが「逆に、塾に通っていない子でも挑戦しやすい入試ととらえることもできる。まずは、その学校がどんな力を求めているのか説明会などでよく確かめてほしい」と助言する。