一色清の「このニュースって何?」

トヨタの脱炭素戦略 → EV以外の選択肢は何かを知っておこう

2021.11.19

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一色 清
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日々のニュースの中に「学び」のきっかけがあります。新聞を読みながら、テレビを見ながら、食卓やリビングでどう話しかけたら、わが子の知的好奇心にスイッチが入るでしょうか。ジャーナリストの一色清さんが毎週、保護者にヒントを教えます。(写真は、会見後、撮影に応じるトヨタ自動車の豊田章男社長〈中央〉やマツダの丸本明社長〈一番左〉ら=2021年11月13日午後、岡山県美作市の岡山国際サーキット)

EVが完全な脱炭素車とはいえない理由

トヨタ自動車とマツダ、スバル、川崎重工業、ヤマハ発動機の5社は、脱炭素化に向けてエンジンを活用した燃料の選択肢を広げる取り組みを進めると発表しました。ガソリンに代えて動植物由来のバイオマス燃料や水素を燃やして走るエンジン車の研究や開発で協力するということです。この発表は5社のトップが勢ぞろいして行われましたが、もちろん中心は圧倒的に規模の大きいトヨタです。

脱炭素に向けて世界の自動車業界は、電気自動車(EV)が主役になるとみて、値段が安くて1回の充電で長い距離を走ることができるEVの開発に懸命になっています。日本でもホンダは2040年までにすべての新車をEVと燃料電池車(FCV)にすると宣言しています。日産自動車も30年代前半までに主要市場の新車を電動車(ガソリンエンジンで発電して走る電気自動車を含む)にすると発表しています。

こうした流れと違う脱炭素戦略をとっているのがトヨタです。トヨタはEVの研究開発もしていますが、並行していくつもの別の選択肢に力を入れています。トヨタがEV一辺倒にしないのには理由があります。一つはEVの弱点である航続距離(1回の充電で走ることができる距離)の短さを克服するのが簡単ではないことです。パワーが長持ちするコンパクトな蓄電池の開発のめどがまだ立っていません。

もう一つは、EVは完全な脱炭素車とはいえないことです。充電する電気が火力発電所でつくられていれば、電気をつくる際に二酸化炭素(CO2)が出ていることになります。日本の場合、CO2を出さない再生可能エネルギーと原子力発電で電気のすべてをまかなえるようになるとはなかなか思えません。となると、EVが本当に正解なのかという疑問が出てきます。

さらに、EV一辺倒になると、磨いてきたエンジン技術がいらなくなりますし、ファミリーのようになっている部品会社の中には仕事がなくなるところが出てきます。それは忍びないという気持ちがうかがえます。また、先行している中国やアメリカと同じ土俵に乗りたくないという気持ちもあるように思います。

トヨタが持っているEV以外の脱炭素に向けた選択肢はおおむね四つです。

一つは、トヨタが世界の先頭を走ってきたハイブリッド車です。低速のときは電気自動車、高速になるとガソリンエンジン車という二つの顔を持っているクルマです。完全な脱炭素車ではないので、欧米では電動車に分類されておらず、将来は新車販売の規制対象になる見通しです。日本は35年までにガソリン車の販売をゼロにする目標を打ち出していますが、ハイブリッド車はガソリン車の分類からは除外されていますので、販売規制を受けません。欧米と日本で解釈の違う微妙なジャンルのクルマなのです。トヨタは完全な脱炭素車までの過渡期はまだ当分続くとみて、ハイブリッド車の役割に期待しています。

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